念願の月面着陸を果たした宇宙飛行士トニーク、だが彼の前には先客が!剣豪の詩人シラノ・ド・ベルジュラック、ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』に登場する 「大砲クラブ」の面々、そして 「ほら男爵」だ。男爵は宇宙服に身を包んだトニークを、月の住民と勘違い。ぜひとも彼に地球人の生活や喜びを知ってもらおうと、奇想天外な地球旅行に誘い出す。
チェコの巨匠による1962年の作品。主人公のほら男爵は、周囲に偽りの冒険談を披露していた実在のドイツ人貴族、ミュンヒハウゼン男爵がモデル。テリー・ギリアムも『バロン』で映画化した人物だ。カレル・ゼマン監督はデジタル時代のはるか前にアニメと実写を融合させ、フィルムに彩色も施した。その結果、メリエスのケレン味、ジュール・ヴェルヌの想像力、ギュスターヴ・ドレの繊細さが詰まった美しい幻想的な冒険映画となった。日々「ちゃんとしろ」と大人に言われ続け窮屈な子供たちには、ちゃんとしてないお調子者ヒーロー・ほら男爵の活躍は爽快だろう。
本作とともに、ゼマンの冒険映画『 Voyage dans la Préhistoire 』『 L’Arche de M. Servadac 』も劇場で同時公開中。字幕が読める9歳位から鑑賞可能だ。DVDも販売中。(瑞)