Désobéissance – 反抗する人
クラントン、イザベル、ジャケ、ノア、オテロ、エルブモン。フランスと欧州で酒の販売が禁じられているブドウの品種だ。先月、南仏でこれら禁止品種ワインの競売が行われた。法律違反で注目を集め、ことの正当性を世に問う行為だ。
19世紀、植物学者や宣教師、米独立戦争に参加したフランス人兵士らによってアメリカのブドウ苗が持ち込まれると、うどんこ病、フィロキセラ病なども流入。フランスのブドウは20年間で壊滅状態に陥った。農薬も未開発のこの時代、病気に強いアメリカの品種と土着のブドウとの交配種が窮地を救う。これが冒頭のハイブリッド6品種だ。
しかしブドウ畑も復興を遂げた1930年代、ワインは生産過剰となる。政府はこれら6品種を減反政策の〈引き抜き〉対象にしてしまう。理由は「健康に害をおよぼす」「まずい」から。
アルデッシュ県の渓谷地で、禁止品種を作り続けるエルヴェ・ガルニエさんに会いに行った。家から見えるブドウ畑に跡継ぎがなく、荒れ地にならぬよう友人らと畑を買ったらジャケ種の畑だった。急斜面に切り石を積みあげて作られた800m2足らずの段々畑。1870年代に植えられ〈引き抜き令〉にもかかわらず綿々と栽培・醸造されてきたブドウを守ろうと、20年前に〈Mémoire de la Vigneぶどうの記憶〉協会を設立。「ジャケ種は片岩質で酸性のここの土壌に合う」。150年の年月と自然の力でこの地には同化したこのブドウは、よその石灰質の土地では絶えてしまった。
「味は、酒を飲む親が嬉しそうに飲めば子はうまいと思い、渋い顔をすればまずいと感じる文化的なもの。法律が判断する問題ではない」と主張。「健康に害を与える」という理由も、研究所に分析を依頼し、科学的根拠が無いことを証明した。
「INRA国立農学研究所でも、今後、農薬が少なくて済む強い品種を重要視している。禁止品種はまさにそうだ」。協会の努力が実を結び、これらの品種が合法化される日も近いかもしれない。(実)
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