スイスリークス?

 昨年秋のルクスリークス(ルクセンブルグ脱税機密情報暴露)に次ぎ、今度は、スイスリークス。世界の50余りの大手メディアと共にルモンド紙(2/8付)は、英国金融大手HSBCのスイス支店が2006〜07年にダミー会社やオフショアを介し世界中の富豪約10万人他、数百の大企業の資金1806億ユーロを脱税させた、という事実を暴露した。さらにビンラディン時代から、サウジアラビア王室をはじめ石油財閥や麻薬・武器密輸組織などからのアルカイダのテロリスト向け資金も洗浄し経由させたという。
 スイスリークスをルモンド紙の特集をもとに探偵小説風に追ってみよう。07年12月、敏腕調査官ヴェイユポ氏が税務資料調査中央局長に就任した。翌年3月、偽名ルベン・アルチディアクというHSBCジュネーブ支店のIT担当者が同局に極秘の手紙を送り、10万7千人余の脱税者リストを持っていると知らせた。数日後、彼がTシャツ姿でデイバックを肩にスイスの国境を越えたところで、同局の諜報員2 人が待ち受ける。一人はネクタイの裏にミニテープレコーダーを付着。2人は直感的に彼に好感を持ったが、脱税情報への報酬はないと告げる。「1サンチームもいらない、金融界に打撃を与えたいだけだ」とルベンさん。局長はよく知らないこの男と脱税ジャングルに入り込んでいいものか迷い、サルコジ派上司に相談するが、当時のヴルト予算相と、エリゼ宮ににらまれ、きわどい綱渡りを始める。ついに極秘のUSBが届き、局長は「ショコラ作戦」と名付け調査開始。しかしルベンさんが実名を明かさなければ全てなかったことにすると迫る。08年12月6日、2回目の面談に一人の女性調査官がミニテープレコーダーを隠し持って同席し、脱税密告者の心理を分析する。昼食中にも実名を明かさない彼は神経を高ぶらせる。情報と引き換えに金がほしいのかと調査官が訊けば、レバノンに行くはずだったが「自分はユートピストだ」と答える。
 この頃、スイス当局も彼を捜し出し、12月22日に尋問後、即日放免。彼はパリの金融調査局に連絡し、局長と会い、実名を告げる前に弁護士をつけてほしいと要求し、実名エルヴェ・ファルチアニと明かす。12月26日、仏係官はニース空港で5枚のDVDを入手した。調査局の技師団がニースのホテルでファルチアニと複雑な暗号の詰まったデータの解読を始める。しかしスイス側は黙ってはいない。09年1月20日、仏側に彼の拘束を願い出る。彼はスイスの司法官に答えるのを拒否する。本国に彼が情報のオリジナルを持ち帰るのでは…と局長は慌てた。ファルチアニはVIP扱いで拘置所で一晩明かす。彼によれば、「サルコジ政権のアリオ=マリ法務相がしきりに証拠品USBを隠滅、または封印しスイスに返還するようにとニースの警視総監に要請したが拒否された」という。
 「ショコラ作戦」に政財界人は批判的で、09年1月、予算省上官が局長に同作戦の停止とファルチアニとの接触も避けるよう忠告した。局長がバカンスから帰ると調査総局長官は、ルマン市抵当権保存官への異動を命じた。8月、ヴルト元予算相は仏国内3千人の脱税をTVで公言せざるをえなかった。40年間脱税と闘ったヴェイユポ氏は調査局に彼の足跡を残し、昨年9月に定年を迎えた。(君)

 

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