女の本音を女性監督が描く映画が最近目立つ。みなコメディで表皮を脱ぎ捨てた自分を笑い飛ばす集団劇仕立て。春に観たモナ・アシャシュ監督の『Les Gazelles』は、14年の結婚生活に疑問を抱いた三十路の女性の独立を激励する女友だち一団の快活な策略戦。夏に観たオードレイ・ダナ監督の『Sous les jupes des filles』は名だたる女優10人が共演し注目されたが題名『女の子のスカートの下』が示す通り、要するに女の下ネタで下品でゲンナリさせられた。11月26日 公開のカティア・レフコヴィッチ監督の『Tiens-toi droite』には3人の主人公がいる。ミス・ニューカレドニアに選ばれたリリ(ローラ・スメット)、子だくさん一家の母サム(ノエミ・ルボフスキー)、親から受け継いだクリーニング屋を切り盛りするルイーズ(マリナ・フォイス)。接点のない3人の日々が並行して描かれる。リリは不思議ちゃんだ。常識外れで本能のままに行動する。その強さと脆さのアンビヴァレンツが痛々しい。サムは4人の娘の母、5度目の出産でまたもや女の子を授かり、しかも双子。彼女は生活に疲れている。ルイーズは独身で野心家。彼氏を利用し、母とクリーニング店を置き去りにして新事業に踏み込むが何処か不幸そう。この3人がやがて絡んでくる。ルイーズが起用された玩具会社で現代のニーズに合った新しい人形作りを任され、その人形のモデルとしてリリが採用され、リリを美の象徴と崇めるサムの娘がアドバイザーを務めることになり、サムも製造に参加する。こうして3人の主人公は今までの殻から一歩抜け出した時点で出会うのだ。置かれた状況に呑み込まれずに「すっくとして」前進せよと女性たちにエールを送っている映画だ。(吉)