「フランス人だから斬(ざん)首…」

9月25日付リベラシオン紙。
9月25日付リベラシオン紙。
 9 月21日、アルジェリアのカビリアで、フランス人登山家エルヴェ・グルデル氏(55)が「イスラム国」兵士に誘拐され、武装集団は、米仏軍が遂行するイラクのジハード勢力への「空爆を24時間以内に止めなければ、彼を斬首する」と宣言、フランスが応えなかったため9月24日、彼を斬首し、その場面をネット公開した。同様に2013年からシリアで人質になっていた米記者J. フォレイやS.ソトロフの斬首(8/19ネット公開)に次いで、英NGO活動員 D. ヘインズ(9/13)、A. ヘニング(10/3)も斬首。人類への「残虐行為」として、オバマ米大統領をはじめオランド大統領、国連全体に衝撃を与え、西洋国を恐怖に陥らせている。
 9月26日パリ回教寺院のブバクール代表他、全国のモスク及びムスリム市民が「残虐行為とテロリズム」を非難、各都市で故グルデル氏追悼のデモ行進を繰り広げた。ムスリム系市民は「イスラームとイスラミズム」の混同とムスリム市民に対する排斥感情を危惧する。政府はアジア、中東、アフリカの40カ国への旅行を控えるよう国民に勧告。英国議会もイラクへの空爆に同意、デンマーク、ベルギー、オランダ、オーストラリア、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーンも空爆への参加を表明。
 ジハードが目指す自称「イスラム国」は、ビンラディンのようにアフガン山岳にこもり米帝国主義だけを敵視するのではない。チェチェン紛争参加者やシリア騒乱に荷担した元アルカイダ兵、イラクの反政府スンニ派、欧米・アジアのイスラム過激派分子を募り(仏人約千人)、拡大していった。シリア、イラクのクルド人、キリスト教徒を迫害、現地の製油所も占拠し、原油を市場価格の1/2〜1/3で隣国に闇販売。そして女性を拉致、強姦し、ジハード洗脳児の増殖を進める。
 トルコ政府は、ジハードをクルド民族排除に利用し空爆に非協力的だったが、10月2日、同国議会は米仏連合軍への参加を認める。欧米の食糧・武器援助がクルディスタン労働者党配下の解放軍に送られているが、イラク、トルコも、オスマン帝国以来弾圧してきたクルディスタンの確立を恐れる。
 2012年トゥールーズのユダヤ人学校で教師・生徒4人を射殺し警官に殺されたモハメド・メラの義兄と友人2人が、今年2 月にトルコからシリアに渡り、9月23日、トルコ警察に出頭しオルリーに着くはずがマルセイユに到着後、街を闊歩していた、というトルコ・仏警察の協力態勢の欠陥が露呈。3人はパリ治安局に拘留され、ジハードに嫌気がさしたと自供しているが、軍事訓練を受けたのか、どうして祖国に戻ったのか…。
 チェチェン紛争でロシア軍に拷問を受けジハードに加わり、ハンブルグに戻って来た男を逮捕するまでの映画『誰よりも狙われた男』(英米独製作、アントン・コルベイン監督)は、ドイツでのシリア、イラク帰りの若者への警戒態勢を描いている。
 連合軍は「イスラム国」を軍事的に攻撃できても、ジハードはアラブ市民の中に潜り、深く広く浸透しかねない。オバマ大統領も「この戦争は長く続くだろう」と言っていたように。1920年に英仏がシリア、イラク、トルコ間に引いた国境も「イスラム国」の前でなくなろうとしている。(君)