久しぶりに納得のフランス映画。

 パリのインテリ、お育ちの良い哲学教師、クレマン(ロイック・コルブリー)が地方都市アラスへ転勤を命じられる。パリを離れての生活なんて考えられない彼は、週末にはパリに帰れるような計画を立てて赴任する。アラスに住むジェニファー(エミリー・ドゥケンヌ)は、一人で息子を育てながら美容師の仕事をする快活な女性。こんな二人が出会って恋に落ちる。あまりに違うライフスタイルや人生哲学に、お互い戸惑いながらも真摯に相手を知ろうと努める二人。この交際は一過性のものなのか? もっと真剣な関係になるのか? やがてクレマンはパリ帰りをキャンセルしてジェニファーが楽しみにしている週末のカラオケ大会に付き合うようにすらなる。彼にとって、パリのスノッブな社交とは違って自己解放して踊りまくる機会は新鮮だったに違いない。そんな頃、ジェニファーは、クレマンが書いた哲学書を本屋で発見し二人の隔たりを痛感する。それも乗り越えようと前向きに関係を作り直そうとするのだが、ある日、ほんの些細なことながら、クレマンが自然にとったある態度にジェニファーは決定的な真実を見てしまう…。
 リュカ・ベルヴォー監督『Pas son genre  タイプじゃない』は、久しぶりに納得のゆくフランス映画。往々にして監督の自己中的な主題が多いフランス映画の中で距離感を保ちつつ、かといって上からの目線ではなく、社会学的考察を含みながら娯楽映画として成立している。
 市井の女性の魅力を見事に演じたジェニファー役のエミリー・ドゥケンヌが素晴らしい。ダルデンヌ兄弟に見出され『ロゼッタ』(99)でいきなりカンヌで主演女優賞を獲得した逸材がここで開花!  (吉)

『Pas son genre』