フランスに来てから長い間、この国の学校には「いじめ」がないんだろうと思い込んでいた。とくにパリではいろんな人種の人が共存しているので身体的な違いは当たり前のことだし、他人と違うことで攻撃されやすい日本と異なり、服装の違いとかも個性としてお互いに認め合う寛容さがあると思っていたのだ。
だが数年来、メディアでも学校でのいじめ(harcèlement scolaire/brimade)が取り上げられるようになり、いじめによる中学生の自殺、SMSやフェイスブックでのいじめの記事をよく目にするようになった。これだけ報道されるということは、近年いじめが目だって増えているということなのだろうか?
さっそく中4の次男に聞いてみた。学校でいじめのようなものはあると言う。「クラスでみんなに避けられている子はいる。『あいつは »bolosse»だ』とか言われるんだ」。どうして嫌われるのかと聞いてみると、「みんなに溶け込んでないし、おもしろくないヤツだから」という。面と向って悪口は言ったりしないので、本人が気づいているかどうかはわからないというから、「いじめ」の範ちゅうには入らないのかもしれないが、いじめに発展する下地は十分にあるようにも思う。
高校生の長男のほうは、学校ではいじめはないし、自分の参加するフェイスブックでもそういうものはないと言う。高校生になると校外の友人関係や活動があり、学校はむしろ授業を受けに行くだけという感じなので、校内の人間関係があまり濃くないせいかな、と思ったりする。
しかし、インターネットでアドフォーラムをのぞいてみると、かなり深刻そうないじめの悩みが書かれている。2012年に教育省が行った18歳以上の978人(うち小中高の子を持つ親が281人)を対象とした調査では、いじめが増えていると答えた人が83%、自分の子どもがいじめを受けていると答えた親は24%というから、やはりいじめという現象はフランスで増えていると考えていいのだろう。(し)