子羊肉をトマトとオリーブと一緒に煮込む。

 「agneau pascal  復活祭の子羊」という表現があるように、復活祭前後は子羊を味わう機会が増える。キリストを「贖罪(しょくざい)の子羊」にたとえる宗教的な要素もあるけれど、なんといっても子羊が一番おいしい時期だからだ。ローストしたり、春野菜と煮込んで楽しむが、今回はトマトと黒オリーブと一緒に煮込んでみた。
 子羊は肩肉épauleを一つ買ってくるのだが、肩甲骨paletteをはずしてもらう。骨にそってレストランではsouris(ハツカネズミ)と呼ばれる肉もはずし、大きめの角切りにする。面倒だな、という人は肉屋さんに頼んで、この作業全部やってもらいます。本職なんだから。
 タマネギは四つに切り分ける。トマトは湯むきしてから八つに切り分ける。ココット鍋にオリーブ油を少しとって中火にかけ、熱くなったら、あらかじめ塩、コショウしておいた子羊肉を入れ、木のへらでかき混ぜながら、まんべんなく軽く焼き色がつくまで炒める。面倒でも2回に分けて炒めるとうまくいくだろう。鍋を火から下ろし、肉を取り出す。クッキングペーパーを敷いた皿にでものせて油気を切るようにするといい。
 ココット鍋は洗わず弱火に戻し、タマネギとニンニクを加える。混ぜ合わせながら5分火を通したら、肉を戻す。小麦粉を振りかけて混ぜ合わせたら、水を半カップ加える。鍋の底にこびりついたうまみを、へらを使って溶け込ませる。ここでトマト、黒オリーブ、タイムを入れ、水をもう半カップ足す。中火にして沸騰させたら、ごく弱火に戻しふたをして、1時間煮込んでいく。底にくっつかないように、数回ヘラで混ぜ合わせることが大切だ。合わせて水を1カップ加えたが、もちろん白ワインにしたらもっと味がよくなるだろう。
 肉が柔らかくなったら、塩とコショウで味を調える。ボクは、ココット鍋のまま食卓に出すが、最後にきざんだバジリコを大さじ2杯ほど加えます。付け合わせはポレンタとかマッシュポテトにしよう。ワインは軽めのトゥーレーヌ地方の赤がおすすめだ。(真)
材料(6人分):子羊の肩肉1個、トマト4個、タマネギ2個、黒オリーブ100g、ニンニク6片、タイム2枝、バジリコ半束、オリーブ油、塩、コショウ

●子羊 agneau
 子羊agneauは大きく3種類に分けられる。生後30日から40日の子羊はagneau de lait(乳のみ子羊)とかagnelet(小さい子羊)と呼ばれる。1頭10キロ前後。乳を飲んで育っただけだから、子羊らしくないと嫌いな人もいるけれど、肉は柔らかく軽い味。ロックフォールのように羊乳のチーズが名産の地方では、早く乳搾りができるように子羊を母羊から離すのが早いので、agneau de laitが特産となっている。
 主にノエル頃から6月にかけて出回る、生後70日から150日の子羊は、1頭20キロから25キロ。肉屋で売られている子羊の約70%を占める。飼料は乳が主な原料なので、身はバラ色で、脂肪は白い色をしているところからagneau blancとかlaitonと呼ばれる。
 秋に出回る、生後6カ月から9カ月の子羊は、放牧地で草を食べているので、broutard(brouterは草を食(は)むこと)とか、脂肪が白さを失っているのでagneau grisと呼ばれる。身はしまっていて、羊moutonに近い濃厚な味。通は、これが一番だという。
●子羊の部位と調理法
 頭も、マグレブの人たちはロースとしてかぶりつくが(ほほ肉が絶品)、フランスの肉屋では売っていない。中の脳みそはダシでゆでてからバターソースをかけるとうまい。これは臓物屋triperieで売っている。首肉collet/collierは煮込みにすると、とろけるようなうまさ。少々値段が張る背肉carré de côtesは、ローストしたり、ソテーしたり、グリルすると最高。安いアバラ肉poitrineもトマト風味で煮込んだりするとうまいが、脂っぽいので、調理する前に余分な脂を切り取る作業が必要になる。肩肉épauleは今回のように小さく切り分けてから煮込んだり、やはり肩甲骨をとってもらったものを、ニンニクやローズマリーの香りをきかせてそのままローストするといい。もも肉は、上部selleをつけたままのgigot entierとselleを切り取ったgigot raccourciに分けられる。これはどちらもやはりロースト。ごちそうです。ステーキもおすすめ。最近、ビストロなどで頻繁にメニューに載るsouris d’agneauは、肩肉の、骨がついた端のところです。


Agneau en cocotte à la tomate et aux olives