サルコジ前大統領は、外国人でフランス国籍を取得した人がある種の犯罪を犯した場合、その国籍を剥奪するという法律を通したり、毎年、滞在許可書なしで滞在している外国人の国外追放目標数を掲げ、それを達成するという、数を重視した移民政策を推進したりし、欧州議会や人権擁護の団体から厳しい批判を受けた。昨年5月、フランソワ・オランドが大統領に選ばれ、社会党政権が誕生。移民問題を担当する内相にマニュエル・ヴァルスが就任した。ヴァルス内相自身移民で、20歳のときにフランス国籍を取得という過去を持つだけに、移民政策が緩和するのではと思われていたのだが…。2012年の不法移民の国外退去数は、これまで最高の3万8200人で、そのうちの2万7千人は強制退去。5月までの右派政権の期間の数字も含まれているとはいえ、左派政権になってから移民政策が急転回したようには見えない。
3月12日ヴァルス内相は、各県の官選知事に「不法移民に対する闘い」という通達を出した。その通達は「(サルコジ大統領の)恣意的な基準で退去数だけを上げようとするやり方とは決別し、移民の権利を大切にしながらも、断固とした行動をとりたい。とはいっても退去数を減らすということではない。常に最大限の退去数を目指すが、はっきりとした基準で行いたい」としている。国外退去が決まった場合、拘置所ではなく自宅に待機させる。滞在許可書を拒まれた移民を、すぐその場で逮捕することは廃止するなど、移民の立場を考えた項目もある一方で、政治的な理由などでの亡命願いを拒否された外国人は、国外退去させることを目指すといった 項目もある。亡命を申請する外国人は、2012年度は約6万人。そのうちの25%から30%しか亡命を認められないというから、国外退去数は減りそうにない。
そして、主にルーマニアから来て、仮のバラック住まいをしているロマに対しても「400近くある、ロマの不法なバラック街の取り壊しは断固として継続する。彼らの大部分は、フランスに定着する意志はないし、国に戻るべきだ」と強硬姿勢をくずさない。これに対し人権擁護団体は、新しい住まいを提供せずに取り壊すのは非人道的であり、彼らもEU圏に属しているのだから、スペイン人やドイツ人同等の扱いを受ける権利がある、と批判。(真)