農業大国フランスの豊かさを実感できる見本市。
春の到来を待ちわびるこの季節。自然の息吹きを感じることができる国際農業見本市Salon International de l’Agricultureが、今年も2月23日からパリで開催される。大地の恵みを受け、じっくりと育まれてきた国内最高峰の農産物や動物が、一堂に集められる。毎年人口の1%が訪れるともいわれるが、第50回目の記念イヤーとなる今年は、70万人の人出が見込まれている。フランス人の多くが、「一度は親と来たり、学校の課外活動で来たことがある」と語り、大人たちにとっても、子供時代の懐かしい思い出と結びついた国民的イベントといってよい。
パリ15区にあるポルト・ド・ヴェルサイユの見本市会場には、一日では見尽くせないほどに充実した展示が延々と続く。フランスを中心に、22カ国、1300のスタンドが集結し、あちらこちらで生産者たちがご自慢の故郷の味を紹介している。なまりのある生産者たちのフランス語は、温かくて耳に心地よい。目玉イベントである動物の品評会には、牛、馬、山羊、犬たちがおすましして勢揃い。会場には、わらや動物たちの匂いがほんわりと漂い、しばらく田舎で過ごす機会がなかった人にとっては、大都会にいながらにして、農場に遊びにきた気分が味わえるだろう。
会場は大変広く、見どころに溢れているため、効率的に回りたい人は、インターネットから事前にスケジュールを確認をしてから出かけるとよいだろう。見学の定番は、やはり動物の品評会と、味見ができるスタンド巡り。また50周年の記念スタンドとして登場するパビリオン4の〈La Ferme pédagogique〉にも注目したい。動物に囲まれた農場の日常が再現され、家畜たちの社会的役割や、飼育者や獣医たちの仕事も立体的に理解できるという。とはいえ、たとえ何も計画せずにふらっと訪れても、いつもどこかで何かしらのイベントが行われているから、退屈知らずで時間が過ぎてしまう。
見本市のディレクター、ジュアナ・モレノさんによると、「農業は、ガストロノミーと同様に、フランス人の心に深く根をはる強力な精神的、文化的遺産。見本市で自らのルーツを再確認しながら、農業大国の豊かさと多様性に、一度に触れられることが人気の秘密」だという。
もちろん日本人にとっても、農業大国フランスの豊かさを肌で実感できる絶好の機会に違いない。フランス人でなくとも、フランスに住んでいることが心から誇らしくなる、とびきり楽しくておいしい農業の祭典なのだ。(瑞)