国民に愛されている俳優ジェラール・ドパルデューが税金逃れのためフランスを去る? アラン・ドロンやアズナブール、ジョニー・アリディらは大分前にスイスに移住しているが、財政危機の中、オランド大統領が金持ちに期待する「愛国的連帯」の富豪税や年収100万ユーロ超過分への75%課税(12/29日、憲法評議会は違憲とした)を恐れ、昨年だけでベルギーに120人余(前年の2倍)のフランス富豪層が移住している。
世界9位の億万長者、LVMHグループ最高責任者アルノー氏のベルギー移住に次ぎドパルデュー、お前もか ! とエロー首相が12月15 日「税金逃れの国境越えとはミナーブル(情けない!)」と吐いた。ドパルデューは国境1キロ先のネシャン市に豪邸をすでに購入。彼は俳優業(ギャラ約200万€)だけでなく、ブラッスリーやレストラン数軒、ブドウ園はブルゴーニュ、メドック、イタリア、モロッコ、東欧、南米にも所有する大事業家でもある。エロー首相の放ったいやみに対するドパルデューの公開状をLe Journal du Dimanche紙が掲載した(12/16)。彼いわく「1948年に生まれ14 歳から工員として働き、俳優としてこれまで45年間に1億4500万ユーロの税金(年平均320万€)、昨年は所得の85%を国に収めたのだ ! 」「才能や成功に対して徴税する国から去りたい。才能に敬意も示さず侮蔑するような首相は自分を何様と思ってるのか」と怒り、パスポートと社会保険証を国に返還するといきり立つ。
確かにベルギーは金持ちの天国。例えばオバマに破れたミット・ロムネー大統領候補は、所得2100万㌦に対し米国でなら240万㌦の所得税を払うべきなのが、ベルギーではたったの20万ユーロ ! 富豪税も有価証券増価税もなく、法人税もフランスなら34%課税がベルギーでは9.8%。ベルギーの億万長者アルベール・フレール所有の投資銀行の収益33億ユーロに対し法人税はたったの152€!! ベルギーは一般世帯に重税(年収1万
8 700€以上に45%)を課す代わりに金持ちを超優遇。贈与税はなきにひとしく家賃収入は無税、所有5年以上なら不動産増価税もなく家持ち様々の待遇。外国人もこの税制にあやかるには1年のうち半年をベルギーに在住すればいい。ドパルデューはエロー首相の売り言葉に買い言葉、金持ち迫害の国にいられるかと、フランスを捨てる意志だ。
しかしベルギー国籍取得にはかなりの時間がかかり、数年前ジョニー・アリディはその手続きを諦めている。歌手・女優リーヌ・ルノーいわく「経済危機で難破船同様の国からは去れない」。数年前にジダンが言った言葉「ぼくを育ててくれた国に税金を払うのは当然」が思い出される。
事業家としての手腕は別として俳優としての成功は、フランス特有の映画製作支援・助成金制度と観衆あってのものと思うのだが、ドパルデューは自称「世界市民」としてベルギー人俳優になるのかと思いきや1 月3 日、彼と親しいプーチン大統領が彼にロシア国籍を与えると表明。5日さっそくドパルデューは黒海沿岸の大統領別荘に向かった。ロシアの所得税率は貧富の差なく13 %だから欧米の富豪層が続々移住しそう。TV映画でラスプーチン役もこなすドパルデューはロシアの名誉市民かつプーチン大統領のマスコットに?(君)