フリーペーパー『Dzień dobryジェンドブレ(こんにちは)』編集長のジャン=ルイ・イザンベールさん。奥さんは、同じ事務所でポーランド関係のバスや航空チケット、保険などの代理業を営んでいるリディアさんだ。
ショパンやキューリー夫人などフランスで活躍したポーランド人は多く、この国で彼らが築き上げた活字文化も歴史が深い。サンジェルマン大通りのポーランド書店〈Librairie Polonaise〉は1833年に、オルレアン河岸にあるポーランド語図書館は1838年につくられた。この11月で100号目を迎えた『ジェンドブレ』はホテルマンだったイザンベールさんが、90年代にひざを痛めて仕事を続けられなくなり、奥さんがポーランド人という経緯もあって創刊されたもの。
名刺交換のようにお互いの最新号を差し出すと、彼は「ああ、これオペラ界隈でよく見るね」と微笑んだ。街で他国語の情報誌を見かけると必ず手にするのだそうだ。
『ジェンドブレ』は、レイアウト以外のすべてをイザンベールさんがひとりでこなしている。それでも、特集記事や広告、フランス語によるポーランドの紹介など盛りだくさんの紙面は、全カラー24ページ。毎月1万部をスペインで印刷している。印刷代がフランスに比べて安価なので助かっているという。
「でも、日本人対象のオヴニーはいいね。ほとんどパリ周辺に固まっているから、配るのが簡単そうだ」。2006年の統計によると、在仏ポーランド人は3万7千人。だがEU加盟後に流動性が高まり続けていることや、多くが国内各地に散らばって住んでいるため総体を把握できないのが現状だ。
そんな彼らに母国語誌を配るのに大きく貢献しているのが、書店やレストランに加えて、フランス国内に200人近くいるポーランド人聖職者たちの人脈だ。敬けんなカトリック教徒のポーランド人にとって、母国語のミサは欠かせないもの。そのミサの場が配布場所にもなっている。実際、同誌にはそれを裏付けるように各地のポーランド語のミサの時刻が掲載されている。一方で、教会との関係ゆえの制約もある。例えば、占い師の広告などは載せることができないといったことだ。
インタビューの間、傍らのリディアさんの電話はひっきりなしに鳴り続け、帰省のチケットを求めるポーランド人たちへの対応におわれていた。「劇場の格安チケットもあるから、君もプレゼントにどうかな?」と、イザンベールさん。
毎年12月はクリスマス料理のレシピなど特別な紙面を作るそうだが、今年は建物の排水管漏れで事務所が使えず準備不足のため休刊することになった。少しさびしい気もするが、祝100号!そして、Wesolych Swiat Bozego Narodzenia(メリー・クリスマス)!(康)
●イザンベールさんおすすめのレストラン
Cracovia : 35 rue Descartes 5e 01.5542.9197
M°Cardinal Lemoine/Place Monge www.restocracovia.fr
パンテオン近くの本格的なポーランド料理店。バラエティが豊富。昼のコースは前菜+メイン+デザート16€から。