「宿題を忘れたら、0点になった!」と、中学生の次男が情けなさそうに帰ってきた。話を聞くと、デッサンの宿題を持っていくのを忘れたので、次回に必ず持ってきます、と弁解しても聞き入れてもらえず、0点になったのだそうだ。宿題を持って行くのを忘れたのは息子が悪いのだが、家で一生懸命絵を描いていた姿を思うと、そんなに厳しくしなくても、とつい思ってしまった。その美術の先生は偏屈なところがあるらしく、同じ先生に習った長男の同級生の親の間でも「あの先生はおかしい!」と話題になっていた。
次男の数学の先生は、ある生徒が口で大きな音を立てたのに腹を立て、音を立てた生徒が自分から名乗るよう10分間授業を中断した。結局だれも白状しなかったので、翌週に罰としてテストが行われることになったそうだ。
息子たちが家にもって帰る話は「いやな先生」、「いやなこと」が多く、「いい先生」のエピソードはほとんど聞かない。次男にいい先生はいないのかと聞くと、「いい先生もいるけど…」。「いい先生ってどんな先生?」、「あまり厳しくなくて、罰とかをあまりしない先生」。ようするに、「いやじゃない先生」っていうことか…。
自分の中学・高校時代を振り返ってみると、もちろん嫌いな先生もいたけれど、夏休みに先生の家に勉強を教えてもらいに行ったり、クラブの合宿で顧問の先生といっしょにご飯を作ったり、といったいい思い出しか今は思い浮かばない。
フランスでは生徒と先生との関係が希薄なのか? 授業以外の接触は昼休みに体育の先生が受け持つスポーツの課外活動ぐらいかも…。日本のようにクラブ活動や文化祭などの行事もないので、授業以外で先生と接する機会はほとんどない。いわば、生徒の注意をそらさないよう授業を進めていくための威厳を装った仮面をつけた先生しか知らないわけだ。それだと、厳しい嫌な面しか見えないのも仕方のないことなのかもしれない。(し)