●映画『ミツバチの羽音と地球の回転』の鎌仲ひとみ監督インタビュー。
原発建設をき然とはねつける山口県祝島、持続可能な生活を実現させるスウェーデンの小さな村…。原発なき未来は夢物語ではないと静かに説く『ミツバチの羽音と地球の回転』が、この度、海を越え、原発大国フランスで特別公開。貴重な機会を前に鎌仲監督に話を伺った。
本作は福島の事故直前に公開されたが…
実は公開初日に、中国電力は映画の舞台の原発建設予定地の埋め立てを強行しようと、600人の作業員と警備員を投入しました。現場は混乱し小さな戦争のようでしたが、全国で本作を観た人がどんどん応援に行ったのです。これをマスコミはほとんど伝えない。その騒ぎの中で福島の事故が起き、状況は一変。マスコミが一斉に祝島のことを伝え始めました。そのひょう変ぶりに驚きました。
制作中の印象的な思い出は?
原発建設に賛成する漁師さんになかなかインタビューできませんでしたが、ある日偶然、漁師のおじいさんに出会いカメラを向けました。彼はその日釣った美しいタイを自慢げに見せ、「タイが釣り糸を引く、その当たりを感じるのがたまらんのじゃ」と嬉しそうに笑ったんです。それで私は「きれいな海が守られているからこそですよね」と返すと、「ふふふ」と笑って立ち去った。実はその漁師さん、原発建設に賛成の方だった。人間は矛盾に満ちていて、しかも原発の実態を知らない人が多いのだと感じた瞬間でした。
原発大国フランスでの初上映ですね…
イタリア、スウェーデン、ドイツ、スイスなどが原発撤退を宣言し、世界は今、持続可能なエネルギーへ舵(かじ)をきろうとしています。原発はまずウランという枯渇資源に頼っているという点で持続可能ではありません。素晴らしいワインを生み出す大地を汚染させないためにもエネルギーの構造転換ができたらいい。そのための参考に私の映画がなるなら幸い。フランスという素晴らしい国が自然エネルギーに転換したらもう無敵。世界で最も住みたい国No.1になるでしょうね。ぜひ市民の手で!(聞き手:瑞)
パリ:3月17日19h、国際大学都市日本館で(RER A : Cité Universitaire)。
リヨン:3月17日15h、La Maison des Passages、3月24日17h、Centre Factory-Pôle Pixel Cinémaで。5€。
詳細・予約は http://pe311.unblog.fr/