ボザール(美術大学)前のボザール通り。今は画廊になったが、以前は映画やシュルレアリスム関係の本を売っていた〈ミノトール〉があってよく出かけたところ。そんな時ボザールの友人たちと落ち合うのが、このラ・シャレットだった。当時は画学生たちもボク同様に貧乏だったので、サンドイッチを頼んでビールを飲むのがふつうだった。定食をしっかりとっているのはボザールの教師や先輩風で、その食べる姿を見るだけでもいろいろ学ばさせてもらった気がする。そのラ・シャレットに「定食」を食べに戻った。
うわっー、店の雰囲気も客層もまったく変わっていない! 昼のコースはアントレ+メインで14€。サンジェルマン界隈でこの値段はあまりない。アントレは、〈固ゆで卵、マヨネーズ添え〉、〈レンズ豆のサラダ〉、〈ニシンの油漬け〉などと、昔ながらの定食屋風。「ノスタルジーは抜きにして」と肝に銘じ、そのニシンの油漬けを冷静に味わった。この一品、ニシンの塩加減が決め手だけれど、ちょうどいい薄味。油にじっくりと漬けてあったせいか身もふっくら。ジャガイモもほのかに温かい。そして生のタマネギやニンジンのアクセント。定食屋の定番として定着したことが心からうなずけてしまう。1/2のピシェでとったコット・デュ・ローヌの赤(10€)ともよく合う。友人はレンズ豆のサラダ。そのために煮上げたレンズ豆だから歯ごたえがある。「豆料理は苦手なんだけれど」と言いながら友人はきちんと平らげた。
メインの「本日の一品」は〈豚のソテー、カレー風味〉だったが、キッチンから流れ出てくるグリルで焼かれている肉の匂いに負けて、〈サーロインfaux-filetのステーキ、サヤインゲン添え〉。そのサヤインゲンは、フランスではよくあることだけれどやっぱりゆで過ぎで、ふにゃっとしているのが残念だったが、ステーキは、どこまでも柔らかく焼き上がっている。これもきれいになくなった。画学生たちがカウンターでサンドイッチを買って、そんなボクらに一瞥をくれながら店から出て行く姿が目に入ってきた。(真)
La Charrette
Adresse : 17 rue des Beaux-Arts, 75006 Paris , FranceTEL : 01.4325.6055
食事は平日の昼のみ。