米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1月13日、フランスの国債を最高のAAAからAA+に格下げし、オーストリアAA+、スペインA、イタリアはさらに低いBBB+に下げた。ドイツとフィンランドはトリプルAのままだ。S&Pは、フランスが密接に関与するユーロ圏の政治・財政問題、そしてフランス自身の財政赤字と労働市場の硬直性を格下げ理由として挙げた。
これまでは、フィンランド、オランダ、ドイツなどが求める厳しい財政基準に対して、フランスがイタリア、スペインなど南部諸国の盾となっていたが、格下げによってフランスの立場が弱体化するとともに、ユーロ圏の南北差がより明確になった感がある。すでに欧州安定化協定や財政赤字国の緊縮財政強化問題で明らかになった独仏の溝がさらに深まる可能性があり、今後のユーロ圏債務危機の行方に影を落としそうな気配だ。
S&Pが早速17日に、フランス電力公社EDFとフランス国鉄SNCFをそれぞれAA−からA+へ、AA+からAAへ格下げしたように、フランス国債の格下げ影響は、他の公営企業、公的機関、地方公共団体にも広がりそうだ。1980年に格付け制度が始まって以来、AAAを維持してきたフランスの信用度が危機に陥っているわけだ。
エコノミストたちも危機感を募らせている。米国が2011年にトリプルAを失った際、中央銀行にあたる連邦準備制度FRSが米国債市場に介入してその影響を食い止めたのに対して、ユーロ圏にあるフランスは欧州中央銀行に同じ役目を期待するわけにはいかない。エコノミストたちは、極度な緊縮財政策を逆効果としながらも、歳出をできるだけ押さえ、技術革新と労働市場の競争力を強化し、経済を活性化することを提唱している。
今回の格下げに対して「2007年来のサルコジ政権の戦略の信頼性が問われている」と非難したオランド社会党大統領候補が政権を取ったらどうなるのか。22日に政策発表で「金融界は敵」とぶち上げたオランド氏は、中小企業向けの投資銀行を設立して中小企業を支援することで経済を活性化させるといった政策を提唱。しかし、1975年以来の経済停滞と高失業率、さらに労働者保護という従来の左派政策のもと、思い切った政策がとれるかどうか難しいところだ。(し)