息子は日本が大好きで日本語を上手に話したいと思っている。
日本語をちゃんと教えたいと思い、息子の航夢(こうむ 7歳)には3歳から毎週日本語教室に通わせている。最初はいやがったが、慣れてくると生活のペースに組み込まれたみたい。毎年行く日本が大好きで、日本語を上手に話したいと思っている。私との会話は日本語。難しいときは、フランス語で言うことがあるが、それを日本語でこういうんだよ、と教えてやるようにしている。そうしないと語彙が増えない。「こどもチャレンジ」や「ドラゼミ」といった日本の通信教育もやっていて、毎月、教材をもらって私が家で見てやっている。時々はさぼることもある。最近は、フランスに住んでいるからにはフランス語が大事だから、日本語は余力があればできればいい、くらいに思っている。
尾上真奈美さん(33歳。夫はフランス人)。
バイリンガル教育を受けなかったけれど後悔していない。
母は日本人、父はフランス人。父は日本語ができたけれど、家ではずっとフランス語だったから、自分は100%フランス人と感じている。4、5年ごとに行く日本では外国人だと感じる。子供のころ、親が日本語教室をすすめてくれたが、遊び盛りだったから、いやだと言った。でも、高校・大学のときに日本で外国人向け日本語講座を受けたり、日本に1年ほど住んだりして、日本語能力試験は3級。簡単な日常会話はできる。漢字は200字くらい読めるし、簡単なメールくらいなら書ける。仕事で日本人とのつながりもあるので、日本語がもっとできていればよかったけれど、バイリンガル教育を受けなかったのは残念だとは思っていない。しかし、母や日本人の友人から日本文化はしっかりと受け継いでいると思うし、私自身の子供にも受け継がれていると思う。
私も3人の子供の親。妻の母国語はスペイン語、家ではフランス語。もし、妻がバイリンガルにしようと子供にスペイン語だけを話そうとしたら、自分だけ疎外されたように思うだろう。家族は一つの言語で話すのが自然だ。
D.Nさん(40歳)。男性。
父が私に日本語を教えようとしなかったのは、おかしい。
父親は日本人、母親は英国人。家庭ではみんなフランス語。日本語は会話の話題がなんとなくわかる程度。日本には2歳のときに1回行っただけなので、いつか行ってみたいと思う。日本語ができないのは残念。日本語を習いたいと父に頼んだが、実行してくれなかったので、独学で日本語をやろうとしたけれど、難しかったのであきらめた。どうして父が私に日本語を教えようとしなかったのか、おかしいと思う。兄も同じような状況だが、やはり本などを使って日本語を覚えようとしたし、フランス人の友人と日本へ行ったこともある。もし、自分が親になってフランスでない国に住んだとしたら、フランス語を子供に伝える。
L.Sさん(24歳)。
日本以外のカルチャーに執着していて、日本語を伝えなかったことに少し後悔。
元夫はフランス人。14歳の男の子と10歳の女の子がいる。長男が小さい時は日本語で話しかけていたが、長女が生まれてからは、家庭がほとんどフランス語になってしまった。もちろん保育園以降、ずっと2人の子はフランスの学校で、そっちの勉強のほうが大変になったし、長男が1歳の時からフルタイムで働き始めたので、子供に日本語を教えてやる時間も余裕もあまりなかった。長男を産んだのが24歳と若かったことや、多様な文化が混じったカルチエにずっと住んでいるので、日本文化を伝えるよりも、日本以外のミックスカルチャーのなかで生きることのほうに執着していた。言葉はコミュニケーションツールだから、たくさん話せれば話せるほどいい。だから子供に日本語をやらせなかったのは少し後悔している。来年から長女がラ・フォンテーヌ中学に行くので、これから日本語をやってくれるのではと期待している。
ほとんど日本にも行っていないので、子供たちは二人ともフランス人だと思っているようだ。最近は私自身、日本に愛着が出てきた。今の年齢で子供を生んでいたら、日本語を教えていたと思う。
T.O さん(38歳)。女性。
妻は日本語だけを話し、私はフランス語だけを話した。
9歳の時に日本に興味を持ち、日本人と結婚したいと思った。独学で日本語の会話を学び、学生のときにエンジニア学校と平行してINALCO(東洋語学校)で勉強して、奨学金を得て日本へ1年半留学した。日本語は話せる。子供が生まれたときから、妻は日本語だけを話し、私はフランス語だけを話した。ハワイの日系2世の言語能力に関する調査があって、日英の両方の言語能力が高い子と両方とも低い子の差は、日英の2言語を混ぜたか混ぜないかによるという。だから、うちでは日本語とフランス語を混ぜないようにした。夫婦間では私がフランス語を話すと、妻は日本語で答える。娘は両親の間の通訳をしてくれる。日本語ができるということはプラスアルファになるから、娘がバイリンガルになったことに満足している。
イヴ・ダヴィッドさん(56歳)。男性
6年生まで日本語をやればマンガが読めるよ、と励ました。
娘が50歳になったときに、人生を楽しく過ごすために日本語と音楽ができたらいいと思って、それを教育方針とした。フランス人の主人も賛成してくれた。妊娠中に言語学の本を読んで、子供の耳は5歳までに感性ができ上がるということがわかったので、5歳までに日本語のベースを教え込み、音楽を教え、その二つを15歳まで優先させようと考えた。私は娘には日本語だけでしゃべる。毎週1回、公文の国語の教材をもらって、毎日10分ずつ、6歳から14歳までやらせた。日本のバラエティー番組のビデオも喜んで見た。娘はよくついてくれたと思う。娘が日本語をやるのがいやだと言ったらやめていたと思う。
細矢ダヴィッド千鶴さん(59歳)。女性。
母はあまりフランス語ができないから母とのコミュニケーションに必要だ。
日本語の敬語は難しいけれど、日常会話はOK。小説は読めるが、新聞は少し難しい。書く力は最近少し落ちたかな(日本語能力試験1級)。公文の教材で日本語を勉強し、保育園から小6まで毎年、夏に帰国して体験入学していた。第3外国語として日本語を取れる9区の私立校に行き、バカロレアでは日本語の方が有利なので第2外国語にした。小さい時は日本語を勉強するのがめんどくさいと思ったときもあったけれど、やってよかったと思っている。フランスは外国人が多い国だから、自分が日本人なのかフランス人なのかは気にならない。日本で道に迷ったときとか、将来の就職に役立つと思うし、母はフランス語があまりできないから、母とコミュニケーションを図るのに必要だ。
オリアンヌさん(17歳。細矢ダヴィッド千鶴さんの娘)。
娘が、ある日突然、日本語を話せるようになりたいと言い出した。
娘の亜弥は簡単な日本語での日常会話はほぼOK。毎年帰国している日本で買物するのも困らない。もちろん、赤ん坊の頃から日本語で話しかけてはいたが、フランス語を話す保育ママに預け、学校も現地校なので、日本語で話しかけてもフランス語で返事が返ってきていた。ところが、ある日突然、日本語を話せるようになりたいと言い出し、今は日本人のベビーシッターを雇い、1年前から日本語教室にも週1回通わせている。私自身は、仕事もしているし、教える時間もないので、できればバイリンガルになってほしかったが、それを娘に強制するつもりはなかった。自分のできる範囲内で手伝えればいいと思う。
ビソン弥生さん(47歳)。女性。
日本語を勉強するのは楽しい。お母さんがいっしょにしてくれることもあるから、日本語は難しいとは思わない。日本には親戚の子がいる(6歳と3歳)から、泊まりに行ったりするのが楽しい。
亜弥さん(9歳)
うまくいかない場合は、親のストレスは子供のストレスになる。
1歳のときにフランスに来た。両親とも日本人なので、もちろん家では日本語、学校など外ではフランス語。日本語はまあ普通に話せるし、新聞などは難しい漢字以外は読める。マンガで読むのは覚えた。書くのが一番難しいが、パリ第7大学で日仏翻訳(修士号)を勉強したのでパソコンでなら書ける。
国語、算数、理科、社会の通信教育を小1から中3まで親からやらされた。中学くらいから「なんでやらないといけないのか」と思って少しさぼったこともある。でも、マンガやテレビゲームのおかげですごく日本語には興味があったから続けられたのかも。フランス語のほうが得意だけど、頭の中では常に日本語で考えている。
バイリンガルを子供に押し付けるのはよくないと思う。本人に興味があったらすればいい。うまくいかない場合は、親のストレスは子供のストレスになる。親は二つの文化を提示することにとどめ、最終的には本人に任せるべきだと思う。
稲葉文生さん(25歳)。