ドミニク・ストロス=カーン国際通貨基金(IMF)専務理事の5月19日の辞任を受けて、後任人事の動きが活発化している。IMFは6月10日までに候補者を受け付け、30日までには後任を決めるという日程を決めた。BRICSと呼ばれる経済成長の著しいブラジル、ロシア、インド、中国、南アもそれぞれ候補を立てるとみられているが、専務理事が欧州から選ばれるという原則は変わらない模様で、最有力候補は欧州諸国の支持を集めているラガルド仏経済相とされている。
ストロス=カーン前専務理事が就任した2007年ごろのIMFは、政策改善条件付きの加盟国への融資がかえって経済混乱を招くとの批判が上がり、融資額が減少した上に赤字が膨張して危機状態だった。しかし、2007年末に起きた米サブプライム問題の影響が世界に広がるなかでIMFの役割は再評価されるようになり、ギリシャ、ポルトガルなどの財政危機救済におけるIMFの役割は重要性を増した。こうした前専務理事の功績に加えてIMF改革推進が期待されていただけに、今回の事件はIMFにとっても大打撃だろう。(し)