ユーロ圏の12月のインフレ率が2.2%と、2008年10月以来の高率になった。経済にとっては景気回復を示すプラスの兆候であるが、一次産品や燃料の需要増によって物価を押し上げるため、消費者にとってはあまり有難くない。オーストラリアの水害などの影響で銅、石炭、コークスなどの価格が上昇し続けているのは一般人には馴染みが薄いとしても、ガソリンの値段はこの1年で11%も上昇し、小麦、砂糖、食用油などは2008年6月以来の高値だ。とくに小麦は昨年1年間で46%も値上がりした。ロシアやアルゼンチンの干ばつ、オーストラリアの水害などの異常気象、新興国の消費拡大に加え、証券市場の低迷や低金利のために一次産品の先物取引への投資が急増し、砂糖、米、小麦などの価格を押し上げているのが原因だ。
国連食糧農業機関が1月5日に発表した昨年12月の食料価格指数は1990年以来の最高値になった。景気もまだ十分に回復しておらず、賃金も上がっていないのに、物価だけは先行して上昇する。砂糖、油、小麦など庶民の生活に直結する製品の値上げは、新年早々うれしくないニュースである。(し)