カフェで、私が「あっつーぃ!」と言いながら瞬間的に耳たぶを触ったら、一緒にいたフランス友人がキョトンと不思議そうな顔で私を見た。そして「耳たぶ触ることって何か特別な意味でもあるの?」と聞いてきた。「一応耳たぶが体の中で一番冷たいということになっているから。ショコラショーが熱かったので耳たぶを触って冷やしてるの」と説明したが、「耳たぶは冷たくない!」と、納得してくれない様子だった。そういえば、フランスで「アッチッチ」と耳たぶを触る人を見たことがない。彼らはどうやっているのだろと観察をしてみたら、ただ手を振って冷ましているだけのようだ! どうやら手をやけどしそうになった時に耳たぶを触るのは、日本独特の仕草のようで、親がそれをやっているのを見ていた子が、その真似をしながら引き継がれてきたのだろうか。なかなか奥深いものがある。
さて、日本では耳たぶが大きいと福耳と言ったりするが,フランスではどうなのか、とフランスの友人に聞いてみた。すると、大きな耳たぶは、子供時代にいたずらっ子だったか劣等生だったことのあかしだ、と教えてくれた。というのも、フランスでは悪さをしたり、勉強をサボると親や先生に耳や耳たぶをひっぱられる。つまり大きい耳たぶは、ひんぱんに引っ張られて伸びてしまったからなのだ。福耳どころか知的にも見られない長い耳たぶは「moche(醜い)」のひと言につきるという。そして薄く小さめの耳たぶの先にピアスがキラリと光るのが理想なのだとか。
実際、フランス人観光客が奈良や鎌倉の大仏を見ると、私たちには好印象を与えてくれる大仏の大きい耳、長い耳たぶは、こっけいに映るのだそうだ。
それからというもの、私はテレビに出てくる人たちの耳たぶを見てしまう癖がついてしまった…。(有)