香港出身の夫妻が切り盛りするこの店、外見は何の変哲もないけれど一度行けば常連になる。ショーケースの見慣れた料理には目もくれずメニューを読もう。そこに彼らの自慢料理がある。
メイン一品で十分なボリュームだけど、つい食べたくなるのがSoupe de maïs au poulet、日本人には懐かしい中華風コーンスープ(2.8€)。とろみのあるスープにふわりと浮かぶちぎれ雲のような卵白とぷちぷち弾けるトウモロコシの粒が空っぽの胃袋をほっこり温めてくれる。メインはWu Dong sauté aux trois délices、三種の海鮮焼きうどん(6.8€)。三つのデリース(美味なるもの)の名にふさわしく、ぷりっぷりの大海老、身の締まった小イカ、からっと揚げた白身魚が、シャキッと歯ごたえの残る野菜とともにコシのあるうどんの上にふんだんにのっていて、とろーり濃厚な塩ダレでからめてある。
奥の調理場では笑顔のかわいいご主人が激しい音を立てて炎と格闘。奥さんいわく「広東料理は火力が要。強い火力で一瞬で火を通すから新鮮な素材の食感を損なわないの」。作り置きはせずすべて注文を受けてからの調理だから白身魚の衣も揚げたてでサクサク。「手抜き仕事はしない」なのにこの値段。ちなみに青島ビールも1.9€と飲食店ではありえない良心価格。払う値よりも多くの幸せを口にし、心からチップをはずみたくなるのはこういう店のこと。(み)
〈広東料理〉嘉年 Kar Nin
Adresse : 16 bd Ornano, 75018 Paris , FranceTEL : 01.4606.5974
アクセス : M°Marcadet Poissonniers
12-22h(土 -21h30)。日休。