ともに生粋のパリっ子だ。マリーさんは3区のレピュブリック界隈、アントワーヌさんは8区のマルゼルブ界隈出身。同じ右岸でも、共産主義者の父とエコロジストの母を持つ無宗教のマリーさんと、カトリックのブルジョワ家庭で育ったアントワーヌさんでは、環境が違う。
1994年の夏、ロワール地方の演劇フェスティバルで知りあった。「君の自転車より、君の方がキレイだよ!」。初対面で、彼の放った一声。半袖シャツに半ズボンのいでたちは、「まるでボーイスカウトかと思ったわ」と笑うマリーさん。夏は過ぎ、秋にパリで再会。『マディソン郡の橋』を見た。「彼女の自由な発想に惹かれたんだ。今まで僕のいた小さな世界から飛び出したくなったんだよ」と彼は言う。そこで画策することひとしきり。当時、運転免許取得中だったマリーさんにコーチを名乗り出た。親から借りた2CVで、パリ運転教授は効果てき面だったよう。
その後、急速に親しくなり、5年後に結婚話が持ち上がるが…、そこでひと騒動起こる。結婚反対派の彼女に対し、「結婚するのは当然」と思う彼。アントワーヌさんの母親は、この機にマリーさんに洗礼するようにすすめる始末だった。
晴れて半年後、市役所で結婚。10年前から彼の親が持つ16区パッシーのアパートで暮らしている。階下にはアントワーヌさんの二人の姉一家が住み、建物全体がこの家族のものだ。今ではラコステのクリエーターになったマリーさんと、スポーツ専門テレビ局に勤めるアントワーヌさん。二人の子供に恵まれ、幸せいっぱいに見えるが、もっかの悩みは教育のこと。「文化や国籍が混在する中で成長することが大切」と考える公立派のマリーさんに対し、私立男子校上がりのアントワーヌさんは懐疑的だ。そういえば最近、ベビーシッターがイスラームのスカーフを被るようになった。彼女への偏見を心配するマリーさんだが、アントワーヌさんは力強く言い放った。「何より子供たちがなついているし、昨日まで『普通』だった彼女が黒いベールをまとっても、彼女に変わりはない!」(咲)
これから相手に期待したいことは?
「いつも互いの声に耳を傾けて、助け合う」(マ)「アムール、アムール!『ロバと王女』の歌詞にように」(ア)
前回のバカンスは?
「8月、コルシカ島南部に10日間。妹の家族と一緒に、合計8人で行ってきたわ」(マ)
夢のバカンスは?
「アジアが大好き。次は子供を連れてカンボジアに行きたいわ」(マ)「まずは来年の2月。スキー旅行が待ち遠しいんだ」(ア)
最近、二人で行ったイベントは?
「平日の夜は二人で外出できないので、かわりばんこで『Des hommes et des dieux 神々と男たち』を観に行ったよ」(ア)
お気に入りのレストランは?
Carette(4 place du Trocadéro 16e 01.4727.8856)
「僕は待つのが大嫌いなんだ。でも、ここのスクランブルエッグのためなら我慢するよ」(ア)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★★「だって短所もふくめ、愛し、敬い、慰め、助け、節操を守る結婚の約束をしたでしょ」(マ)
★★★★「パーフェクトというものはないんだよ」(ア)
毎朝、アントワーヌさんが朝食を準備し、ベッドに運ぶ習慣だ。