フランス中を震撼させた「ドミニチ裁判」

●Dominici
 1952年夏、アルプスに近いプロヴァンス高地地方で避暑に遊びにきていたイギリス人一家が惨殺される。殺人現場と至近距離にあった農場一家の一人が殺人発見者であると同時に第一容疑者として検挙されたが、2年にわたる捜査の後、本当の殺人者は60歳を越えた農場一家の長であるガストン・ドミニチであると検事側は確信し検挙、こうして事件発生後フランス中を震撼させた「ドミニチ裁判」が始まる。
 この戯曲では被告、証言者と弁護側、そして裁く側が2週間少し続いた同裁判の様子を再現。実際個人的な経験はないけれど、こうした捜査や裁判というのは(映画や演劇または小説で知る限り)日を追って同じ尋問や応答を繰り返し、その期間が長いほど、何が真実であるのかがいよいよ闇に包まれていく、という危険をはらんでいるのだ、と再発見。ドミニチという朴訥(ぼくとつ)そうな老人がなぜこの殺人事件に巻き込まれたのか、そしてその背景には何があったのか?  裁判は、一人の人間の身と皮を剥ぎ生身状態にするための、格好で残酷な場だと思う。人間というのは裁かれるという行為によってすでに処刑を受けているのも同然なのかもしれない。
 どちらかといえば頑固だけが取り柄のような老人ドミニチにしても裁判が進むうちに「潔白な人物」ではないことがわかってくる…そもそも完全に「潔白な」人間が存在するのだろうか?…演出はロベール・オッセン、脚本はこの欄でもすでに何度か紹介した(通常は喜劇)脚本家であるマルク・ファイエ。7月初め迄。(海)
木-土20h30、土16h30、日15h30。18.5?-47.5?。

Théâtre de Paris : 15 rue Blanche 9e 01.4874.2537 
www.theatredeparis.com