歴史とともに、漁港、商港からリゾート地へ
港を中心に発展した町にはそれなりの歴史がある。ラ・ロシェルは小さな漁港から始まり、13世紀には英国やフランドル地方を相手にワインや塩を輸出し、布や羊毛を輸入する商港に発展し、15世紀にはカナダやアンチーユ諸島との交易で栄えた。現在はマリンスポーツの盛んなリゾート地である。
そうした新世界との往来・交易の歴史の一端を解き明かしてくれるのが、新世界博物館だ。17から19世紀のアメリカ大陸(とくにケベック、ルイジアナ)の地図や、アンチーユ諸島産香辛料、砂糖、コーヒーなどの仕入れ書といった史料が展示されている。欧州の繊維製品などと引き換えにアフリカで黒人奴隷を調達し、米大陸・アンチーユ諸島で奴隷と引き換えに砂糖、コーヒーなどを欧州に持ち帰るという悪名高い三角貿易(奴隷貿易)や、フランスにおける有色人種の登録、1716年の奴隷滞在規則に関する勅令、ボルドー、ナント、ラ・ロシェルから入国した奴隷数などの史料も非常に興味深い-1-。
自然史博物館-2-では新世界との交易を別の角度から見せてくれる。アンティークな陳列ケースに入れられた世界中の貝のコレクション「ラファイユ陳列室」のほか、膨大な数の蝶の標本、あらゆる種類の鳥や動物のはく製が所狭しと並んでいる。また、ポワトゥ=シャラント地方の低湿地に特有の生物・植物(沼地の消滅とともに絶滅の危機に瀕している種もある)の展示はその多種多様さに驚かされる。
博物館に飽きたら、旧市街を散策しよう。旧港に面したゴシック様式のひときわ高い大時計門Porte de la Grosse-Horloge-3-は旧市街地への入り口になっており、門に続くRue de Palaisをはじめとした旧市街地の通りにはフィレンツェを思わせるような石造りのアーチ状の通路に商店が並んでおり-4-、往年の商港の繁栄を思い起こさせる。また、旧市街を離れて野趣に富むシャリュエ公園の小川のほとりを散歩するのもいい-5-。
夕食は旧港に近いレストラン街、サン・ジャン・デュ・ペロ通りの〈Les 4 Sergents〉でとった。シャラント地方名産のメロン・スープに、ローストしたサバ、イチゴのガスパチョのコース-6-。魚本来の味をあまり生かしてないような調理法は残念だが、温室のような、ゆったりとした緑の多い空間はリゾート気分を盛り上げてくれる。
旅の締めくくりは、なんといってもラ・ロシェル自慢の水族館-7-。お馴染みの大西洋・地中海の魚から、太平洋、インド洋の目をみはるようなカラフルな熱帯魚やサンゴ、幻想的なクラゲ、上からも下からも観賞できるサメなど、巨大な水槽に顔を近づけて見て回ると、深海の世界に引き込まれるようだ。水族館には港が見渡せるカフェがある。次回はぜひランチかマカロンセットを試してみたい。(し)
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Musée Nouveau Monde
フランス植民地における
奴隷制廃止デクレ(1794年)。
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