●Alice et cetera
性革命がうたわれた1960年代後半以降、男女の関係はどう変わっていったのだろうか? この命題を掲げて演出家スチュワート・セイドが、イタリア人風刺喜劇作家ダリオ・フォーと妻フランカ・ラーメ作の三つの戯曲を選び、一つの戯曲として創作したものだ。
まず一つめの『Alice au pays sans merveilles』では三人のアリスが性の解放はそれほど素晴らしいものではなく、男たちは相変わらずアリスたちを好奇と欲望のまなざしでなめまわし、女たちはちっとも自由にはなっていないと社会を批判し、次の『Je rentre à la maison』では夫に愛想がつきて家出した人妻が、経験したばかりの一日の情事について語る。最後の『Couple ouvert à deux battants』では浮気ばかりしている夫としっと深い妻が夫婦関係は破棄せず互いに自由に恋愛をしようと決めたのはいいけれど、妻に愛人ができた途端、夫の態度がひょう変して…というてん末が描かれる。
1960-70年代に書かれた三つの作品に共通するのは、社会は変化しても個人の本質はそんなにすぐには変わらないということだろう。どの登場人物たちも社会の変化にとまどい、迷いながら自らを見いだしていこうとしているように私の目には映る。
挑発するようなアリスたちの仕草だったり、人妻を演ずるのは男優だったり…とセイドの個性的な演出が、フォーとラーメのブラックなテキストに拍車をかけ、苦笑いや含み笑い、そして爆笑と会場は笑いに包まれる。いずれもエネルギッシュで素晴らしい演技を披露する役者たちへの喝采が止まなかった。5/15迄。(海)
Théâtre du Rond Point : 2bis av. Franklin D. Roosevelt 8e 01.4495.9821
20h30(5/4-7)、18h30(5/11-15)。
10-28€。
www.theatredurondpoint.fr