春の到来を予感させるような風の暖かい日、ポン・デザール橋を歩いていると、欄干の金網に南京錠がたくさんぶら下がっているのが目についた。聞くところによると、永遠の愛を誓ったカップルが南京錠に鍵をかけて、その鍵をセーヌ川に捨てるのだそう。錠がその場にある限りは愛も持続するというわけだ。
由来はイタリアのヤングアダルト恋愛小説(仏語名は『J’ai envie de toi』)の一場面からで、その舞台であるローマのミルヴィオ橋には何千という南京錠が付けられているらしい。この「伝説」はフィレンツェ(ヴェッキオ橋)やモスクワ、そしてここ、パリにも伝わった。愛を解消したくなったらどうする? セーヌ川に飛び込んで鍵を探したくなかったら、合鍵を用意しておくという手も…。(し)