フランスが強いスポーツといえば、サッカーだったけれど、最近は落ち目。それに引き換えハンドボールは男子も女子も飛ぶ鳥を落とす勢い。特に男子代表は、ウィーンで開催されていた欧州選手権でクロアチアを破り、北京五輪、世界選手権に続く三連覇! その立役者の一人がニコラ・カラバチッチ選手だ。「あまりの感動と幸福感で何がおこっているのか、夢うつつの気分で、まだ勝利が信じられない」。身長1メートル96センチ、体重105キロ。強靭な力と敏捷さを兼ね備えたプレーは、守備はもちろん、攻撃の要(かなめ)。その太い腕から繰り出される目にもとまらぬシュートは圧倒的だ。2008年の五輪では攻撃のベストプレイヤーに、2009年の世界選手権ではハーフセンターのベストプレイヤーに選ばれている。
1984年セルビアに生まれる。クロアチア人の父は、やはりハンドボールの名選手だった。その父がストラスブールのクラブに移籍され、家族共々フランスに居を定めたのは、ニコラが4歳の時だった。「父の試合は家族全員で欠かさず観戦に出かけたものです」。最初のクラブ、コルマール時代にすでに注目され、2000年、16歳の時に1次リーグに属しているモンペリエのクラブへ。3年後にリーグ優勝という勝利の味を知り、当時のポジションのレフトバックとしては、押しも押されぬ存在となる。2005年からはドイツの名チーム、キエルへに移り、世界一ともいえるドイツ選手権でも実力を発揮。昨年からは、家族が住んでいるモンペリエのクラブに戻る。「家族に囲まれていることが、心のバランスを保つために大切なんだ」と語る優しい青年でもある。(真)