フランスでは車内に 何も置かない。

 友だちのローランスさんの運転で、オペラ鑑賞に出かけた。おしゃれにドレスアップしているローランスさんに対して、私は完全防備の重ね着で来てしまった。目的地に到着。乗車した際に後部座席にのせていた帽子・手袋・マフラーをそのままにして車から降りようとしたその時、ローランスさんは突然、びっくりするようなことを私に言った。
 「ちょっとカズミ!  シートの上には何も置かないでちょうだい。悪い魂胆の人がその下に何かあると思って狙われちゃうじゃない」。「そうなの…ごめんなさい、足元に置くわ」。「足元も駄目よ、とにかく車内には何も置かないのが原則。狙われる原因は作らないに限るわ」。「じゃ、せめてトランクならいいわよね?」。「本当はそれも止めてほしいけど、しょうがないわね。トランクに何か大切なものを隠していると周囲の人に思わせるような行為もしたくないのよ。今度から不必要なものは、最初から持ってこないでね」
 確かに周囲のクルマを見渡すと、おんぼろなクルマから高級車まで、決まったように車内には何も置いていない。ポツンと地図が一冊内ポケットにあるくらい。日本のようにダッシュボードからつき出たカーナビも、カードが刺さりっぱなしの高速道路のカードももちろんない。
 以前雑誌に「クルマは自分の部屋と同じ。おしゃれに自分らしく着こなしちゃおう」と書いて、さまざまなカーアクセサリーを紹介したが、フランスで車内を素敵に飾り立ててしまうという感覚は、危険を伴ってしまうので、存在しないようだ。かなり慣れてきたとはいえ、まだまだ私も新参者。ローランスさんに教えてもらわなければ、うっかり私も車内を自分流にしてしまうところだった。所変われば流儀も変わる。(和)