ベルギーの国境に近いフランドル地方で作られているオレンジ色のチーズがミモレット。殺菌された牛乳から作られていて、オレンジ色はロクーという自然の着色料による。ルブロションやカンタルと同様に非加熱圧搾タイプ。このチーズの歴史は第一次大戦以降と新しく、元々はオランダ産のミモレットのコピーだが、現在はフランス産の方が顔をきかせている。直径18センチくらいの円形で、リール市のカーヴで熟成されてきたこともあり、〈Boule de Lille〉の名でも親しまれてきた。
熟成期間6~12カ月のものは〈jeune 若い〉、12カ月以上のものは〈vieille 古い〉と呼ばれる。写真は18カ月以上経っている「お年寄り」だ。口に含んでよくかみしめると、極上のパルメザンにも負けない、カラスミを思わせるような、うまみがある。
食後にもうってつけのチーズだが、「若者」はおろしてから、ソースに加えたりグラタンに使ったりするとオレンジ色がきれいだ。写真のように、皮むき器couteau économeを使って薄く切ってから、季節のブドウやクルミと盛り合わせておつまみにするのもいい。飲むのは、バニュルスやポルトーなどの赤い甘口のアペリチフがいい。(真)