●Europa
『ヨーロッパ』といっても東欧。ヤナーチェク(モラヴィア)、バルトーク(ハンガリー)、エネスク(ルーマニア)、シマノフスキ(ポーランド)と、東欧の4人の作曲家のバイオリンとピアノのための作品を集めたアルバムだ。
1914年から1928年にかけての作品だ。当時西ヨーロッパでは、マーラー、シェーンベルク、ドビュッシーらが後期ロマン主義を乗り越えるべき先鋭的な作品を発表していた。それに引きかえ、東欧小国の作曲家は、西ヨーロッパの音楽を意識しながらも、自分たちの国の血となり肉となっている民俗音楽に強い関心を示した。ハプスブルグ帝国やロシア帝国からの独立を目指していた民族主義の音楽的な現れだったのだろう。バイオリニストのダヴィッド・グリマル、ピアニストのジョルジュ・プリュデルマシェールはこの4人の作曲家の作品に、21世紀の音楽の未来を聴いているのかもしれない。
ヤナーチェクのソナタは、モラヴィアのコトバの抑揚がそのまま曲の呼吸感になっているようなところがあり、それは絶望的なつぶやきでもある。素晴らしいバイオリニストでもあったエネスクの曲には、ルーマニアのジプシーたちの即興ともいえる名人芸が聴かれる。バルトークのラプソディーは1928年の作品で、荒々しいリズムと不協和な和声で難曲とされる弦楽四重奏曲第4番と同年の作品とは思えない自由な喜びにあふれている。
グリマルとプリュデルマシェールの演奏は素晴らしいのひと言!(真)