フランスチーズの代表と言っても過言ではないカマンベール、意外にその歴史は浅い。ノルマンディー地方オルヌ県、カマンベール村でチーズを作っていたマリー・アレルが、フランス革命下の恐怖政治から逃亡してきた宣誓拒否司祭をかくまったのは1790年のこと。マリーは司祭から、チーズがもっと味わい深くなるための熟成の秘訣を授かる。1791年、改良を加え「カマンベール」と名付けた司祭秘伝のチーズを近郊の市場で売り始めたところ大ヒット。後に、マリーの子孫、ヴィクトル・ペネルが、その地方を訪れたナポレオン3世にカマンベールを賞味させ、その味にすっかり惚れ込んだ皇帝はペネルをお抱え商人とする。保存のため、薄く削った木片で作った丸い小さな箱に入れることを1890年にリデル技師が提案。現在のカマンベールの誕生である。(み)