パリ7区、ヴァノー通りに住む15歳と20歳の二人姉妹。時は1940年、ドイツとの戦争が始まり、敵国の兵隊がパリを行進する前夜から、アメリカ兵のパレードがパリ市民たちに歓迎される終戦直後まで、この姉妹がつけた日記(本舞台作品と同じ題名で1962年に初版、2002年にDeno鼠社から再版)が舞台化されている。
舞台の上には姉妹の部屋を思わせる心地よく親密な空間が広がっている。姉と妹が一緒に、または別々につける日記の内容は、日常のたわいない出来事から家族、共通の友人の話題、二人だけの秘密、恋愛の相談など多岐にわたる。やがて戦争は深刻さを増し、パリの街に、そして姉妹の生活にも暗い影を落とし始める。冷静な姉は「一日も早く家から出るため」に愛してもいない男性との婚礼に承諾し、はじめは「理想の男性像」を思い描き、夢見る少女風だった妹も、戦争の行方や自分たちの未来を憂えるようになる。
日記の作者を紹介しよう。ブノワット・グルー(姉)は、戦後、ラテン語教師を経た後ジャーナリスト、フェミニズム運動家として活躍した女性。代表作とされる『最後の植民地 Ainsi soit-elle』と『愛の港 Vaisseau du cœur』 は日本でも出版されている。妹フロラは〈ELLE〉や美術雑誌〈Connaissance des Arts〉 の記者として活躍し、やはり姉ブノワットと同様、フェミニズム運動に積極的に参加。2001年に他界している。
今回、姉妹の日記を舞台脚本に起こしたのは、妹フロラ役を演ずるリザ・シュステール。男性的で利発な印象を与える姉ブノワット役オード・ブリアンとは対照的な、ふんわりとした魅力を出している。演出はパンチカ・ヴェレズ。(海)
Théâtre de Poche Montparnasse :
75 bd du Montparnasse 6e 01.4548.9297
火-土21h、日マチネ15h30。 10e-32e。