憧れの作家との出会い
BDファンにとってこのフェスティバルのもう一つの楽しみは、好きな作家のサイン会や講演会で作家自身と触れ合えることだろう。マンガ家を目指している人なら、好きな作家に質問をしてもいい。出版社側もサイン会をすることで、本がいつもより売れるので、力を入れている。人気がある作家だと、サイン会にも整理券を配布する。これに集まる人の数は数百人。このとき整理券が手に入った人は幸せ者だ。今年は初めてアングレームに訪れた、ダニエル・クロウとクリス・ウェア、そして、『ペルスポリス』の作家、マルジャン・サトラピの講演会が注目をあびた。
展覧会も充実
このアングレームのフェスティバルはBDのスタンドだけに力を入れているのではない。たくさんの作家の展覧会も開催している。まずは今年で生誕50周年を迎えるロバのBD「ブール・エ・ビル」の歴史を綴っている展覧会。市庁舎前に設置されたパネルにこと細かく、キャラクターのことや誕生秘話などが表示されている。特に子供たちに人気があった。今回注目の展覧会は、中心から外れたところにあるCIBDI(国際BDイメージ会館)で展示されていた、審査員長も務めているデュピュイ&ベルベリアンの?「二人展」だろう。彼らは二人で作品を作ることが多く、代表作は『ル・ジュルナル・ダアンリエット』や『ムッシュー・ジャン』など。ワイン屋さんのニコラのイラストも彼らが手がけたもので、知名度が高い。彼らの過去を振り返る展覧会の内容は、ファンにかぎらず見どころがたくさんあり、楽しめる。やはり作家のオリジナルの作品に触れられるのはいい。特に初期の頃の作品など、彼らの原点が見えるようでおもしろい。他に、アソシアシオン出版社の創設者の一人、リュッペール&ミュローの『メゾン・クローズ』展。彼らと、毎回違う作家とのコラボで仕上げた4コママンガの展示で、スタイルの違う作家が生む作品は見ていておもしろい。さらに同じ場所に魚喃キリコの作品も展示されている。フランスでも評価の高い彼女の作品は、構図にかなりこだわっており、すっきりとした線で描かれた作品は特徴的。作業風景を撮った映像で、彼女のこだわりが見られたのはおもしろかった。
デッサン・コンサート
今年で5回目を迎えた、コンサートと作家のライブデッサンを織り交ぜたスペクタクル。今回登場するのは、アルチュールHの曲にクリストフ・ブラン。アルノーの曲にニックスとヨハン・デ・モール。ロドルフ・ブルジェの曲にデュピュイ&ベルベリアンといった組み合わせ。アルノーのコンサートを見に行き、うまく曲の内容に合わせて絵を描くな、と感嘆する。もちろん事前の打ち合わせはあるのだが、それでも曲の時間に合わせてデッサンを仕上げていくのは簡単ではないはず。早く的確になおかつテーマに沿った内容のデッサンをするのはマンガ家ならではの技といえよう。アルノーの曲にもユーモアがあって楽しかった。