アングレームの町
アングレームの町はフランスの南西部ポワトゥ・シャラント地方に位置する。モンパルナス駅からボルドー行きのTGVに乗り、約2時間で到着する。市街地は駅から少し離れており、小高い丘の上に位置する。アングレームの町を囲む城壁がとても印象的で、中世の町に迷い込んだ印象を与える。町の外れにはシャラント川が流れており、市街地から眺める自然もきれいだ。町の中心に市庁舎があり、メインストリートが1本町を横切るように通っており、そこに初代フェスティバル審査員長のエルジェの像が建っている。BDフェスティバルで有名になった町で、至る所に、有名なマンガ家の壁画が存在する。道しるべがマンガでよく使われる吹き出しの形になっているのがおもしろい。これといった特産物がないのは残念だが、コニャック地方が隣接しており、フェスティバル期間はコニャックをあちらこちらですすめていた。マンガフェスティバルの他、城壁沿いをコースとするクラシックカーレースがこの町の2大イベントだ。
大手からインディーズまで出版社スタンドいろいろ
フェスティバルは大まかに分けて大きな二つのスタンドが存在する。一つは大手出版社が連なるブースで構成されている、ル・モンド・デ・ビュル。ここには有名な出版社のフリュイド・グラシアル、カステルマン、ダルゴー、グレナ、デルクール、デュピュイなどのフランスやベルギーの出版社、アメコミに強いパニーニやソレイユなどもこのカテゴリーにある。よくフナックなどで見かけるBDはこれらの出版社がほとんどだ。もう一つはインディーズ系の出版社が連なるスタンド、ル・ヌーボー・モンド。アソシアシオン、アクト・シュド・BD、コーネリアス、レ・ルキャン・マルトー、など、名前が知られている出版社も多いが、このブースの見どころはやはり、あまり知られていない、フナックなど大手の本屋さんでは見つからない出版社のBDや本が見つかるところだろう。日本で例えると、『ガロ』に載っているようなマンガが手に入ると思ってもらうとわかりやすい。本当に聞いたことないような小さな出版社もあるので、思いがけない作品に出会えるかも知れない。パリでも小さな本屋さんでしか見つからないBDがここならすぐに見つかるので、一日がすぐに過ぎてしまう。ぜひ時間に余裕をもって訪れたい。他には、パラ・BDというマンガの古本屋が連なるブースもあり、こちらは本当にマニア向き。長年探していた初版のBDとか手に入る可能性あり!?
マンガビルディング
フランスは日本の次に、いわゆる日本のマンガが売れている国だ。フランスでも日本のマンガはBDと呼ばずにMANGAとしっかりカテゴリーを分けている。ここアングレームでも同じで、マンガのブースはマンガビルディングと、一つのカテゴリーに分けられている。それくらい若者を中心にマンガがフランスでは人気がある証拠だろう。ビルの1階と地下の部分がマンガ専用スペースとして使われ、1階にはマンガ専門の出版社が連なっており常に人でいっぱい。地下にはマンガ作家の展覧会や、サイン会、アニメ上映会場に使われている。特に、水木しげるの妖怪をテーマにした展覧会は興味深い。妖怪をテーマにマンガを描いたパイオニア、『ゲゲゲの鬼太郎』など、有名な作品の原画なども見られたのはとてもうれしい。そのなかでも、葛飾北斎の富嶽三十六景に妖怪のイラストを描きたした作品はフランス人の目にも新鮮に映ったようだ。他には宮崎駿の『崖の上のポニョ』の原画のコピーが展示されていたり、平田弘史のサイン会、村田蓮爾の講演会などたくさんのイベントが催された。アニメや邦画にも力を入れており、『ゲゲゲの鬼太郎』や『河童のクゥと夏休み』、『デスノート』や『さくらん』なども上映。特にフランスではまだ公開されてないが日本では昨年公開された『崖の上のポニョ』やフランスでも人気のあるマンガ浦沢直樹の『20世紀少年』などの試写会は人気があった。『崖の上のポニョ』を観に行ったが、フランス人も気に入っていたようだ。あの一度聞いたら忘れられない「ポーニョ、ポニョ、ポニョさかなの子」と、主題歌を上映後もたくさんの人が口ずさんでいたのが印象に残った。