スペイン市民戦争、日中戦争、第二次世界大戦、インドシナ戦争などに従軍し、生と死のボーダーラインで闘う人間たちを撮り、ヘミングウェイやピカソに気に入られ、イングリッド・バーグマンだけでなく数多くの女たちと愛し愛され、浴びるほど酒を飲み、ニコンを手にしたまま地雷で爆死した写真家といえば、ロバート・キャパ。この写真集で、そんな彼の生き様の軌跡を追っていくことができる。
スペイン市民戦争で銃弾を受けた瞬間の兵士(兵士の士気をあおるためのやらせだったという説が最近強くなってきている)、ノルマンディー上陸作戦の兵士たち(恐怖のせいで手が震えたのかピンぼけ)、自動車事故で包帯だらけのヘミングウェイ、若い妻と浜辺を散歩するピカソ…といった有名な写真も収められている。しかし、圧巻は、1936年から39年にかけて、終始共和国側につきながら撮り続けたスペイン市民戦争の一連の写真だろう。銃をもって笑顔を浮かべる若い兵士、外国からの義勇兵と市民の交友風景、戦闘の合間に家族に手紙を書く兵士たち、がれきに立ちつくす女、道路に横たわる数々の死体、フランスに向けて大きな荷物を抱えて避難する市民たち…キャパのヒューマニズムに裏打ちされた確かな視線がある。(真)
Phaidon社発行。大判570頁で印刷もよい。39.95€!