タイ料理は、砂糖の甘味、ライムなどの酸味、唐辛子の辛味が混ざり合っているのが、おいしさの秘けつです。
きょうの昼ごはん、ペイさんがエスパス・ジャポンのキッチンでタイ料理を作ってくれるという。こんな機会を逃す手はない、とオヴニーのスタッフは、彼女の包丁さばきを乱さないようにと気を遣いながら、いろいろとタイ料理について聞いてみました。
「私はバンコクの北300キロのところにあるサラブリーに住んでいました。兄は、そこの高級ホテルのシェフを務めていて、その兄から料理を教わりました」
いつからパリに、とたずねてみた。「3年前に、映画監督のオリヴィエと出会ってパリにやって来ました。タイで撮影されたオリヴィエの映画に出演したのがきっかけ。そのあとで私の料理のおいしさにビックリしたんですよ! 私はタイ中部出身だけれど、東北部イーサーンの料理を作ることが多いです。カーオニャオ(小さなせいろで蒸したもち米)、ソムタム(青パパイヤのサラダ)、ガイヤーン(タイ風ヤキトリ)、ナマズなどの川魚料理がイーサーン料理です」という答えがかえってきた。
「タイ料理特有の極辛の味付けも、イーサーン料理が広まったからです。北部では野菜や果物が中心になったり昆虫を食べたりするけれど、タイ人の主食はやはり米。それをトムヤンなどのスープや野菜料理など数品のおかずでというのが一般的で、朝ごはんも、昼ごはんも、晩ごはんもこのタイプです。食事中にお茶は飲みません。ふつうの水です。客が来た時などは、ビールあるいはウイスキーを飲みます。肉が入った一品は晩ごはんということが多い。お正月には、カノンチンです。テーブルの真ん中にゆで上げたライスヌードルを置き、魚や肉の各種カレー、野菜料理で囲み、それぞれの好みで組み合わせながら食べます。タイ料理にはほとんどいつも砂糖が入るんですよ。その甘味と、ライムなどの酸味、唐辛子の辛味が混ざり合っているのが、おいしさの秘けつです。そしてバジリコ、バクチー(コリアンダー)、レモングラス、マックル(コブミカン)などの香り。味のベースは、ベトナム料理などと同様にナムプラー(魚醤)です。ココナツミルクもカレーのおいしさに一役を買っています」
ペイさんがテーブルのセッティングを始めたが、皿の脇には、スプーンとフォークだけ。「これが基本です。材料はすでに食べやすく切ってあるので、ナイフはいりません。蒸したもち米などは、手で小さく丸めて口に入れますが、他の料理も手だけで食べる人がまだまだ多いです。はしは、麺を食べる時にしか使いません。麺を食べるのは中国料理の影響です」
まずはエビのスープ。ライムの酸味、ガランガやレモングラスの香り、ココナツミルクの風味。オヴニーのスタッフ一同、口を揃えて「アロイー(おいしい)!」。次はマックルの葉の香りがきいている鶏肉のココナツ風味カレー。「フランスに来てからも、毎日タイ料理です。主人もとても満足しているし、15カ月になったばかりの息子も、辛い料理が平気で、食べたがりますが、幼児のおなかには辛いものはあまり良くないので、ちょっとだけ。フランス人の友人たちが家に来たときもタイ料理でもてなしますが、いつも好評です。といっても辛みは、さすがに控えめにしますが。このカレー、私にはちょっと辛さが足りません。辛さが足りないという人は、唐辛子を少量かじりかじりしながら食べるといいですよ。11区にある〈ラ・キャラバン〉という、若者向けのレストランで料理を作っていた時も、この一品をそのまま出していました。辛さ以外は、本物のタイ料理を味わってもらいたかったのです」
まろやかな味わいのカレーだったが、食べ終わった時に口の中に残る確かな辛味。うかつに「もっと辛くしてください」などと言わずによかったのかもしれない。「コプクン・クラップ(男の人からありがとうという時)!」「コプクン・カー(女の人からありがとう)!」(真)
フランス人の友人たちが
家に来た時も、タイ料理を作ってもてなします。
いつも好評ですが、辛みは、さすがに控えめにします。
Lao Siamのソムタム(青パパイヤのサラダ)。
★ペイさんがエスパス・ジャポンで本格的なタイ料理の教室を開きます。
鶏肉のグリーンカレー、野菜の春巻き、レモングラス風味エビのスープ…など。
11月25日から(毎週火曜19時~)全4回のコースで150€(会員・生徒は140€)。
問い合わせは01.4700.7747 cuisine@espacejapon.com
★★ペイさんは電話一つで家庭に出張してタイ料理を作ります。06.6104.4823