シャトー・ルージュの駅前の〈Marché Dejean〉には、露店の他に(表紙参照)、アフリカ人向けの魚屋と八百屋が並んでいる。アフリカ料理に欠かせないキャピテン、ティラピアといった魚やオクラ、マニョックといった野菜たち。これらの店を経営している多くは華僑の人々だ。彼らはアフリカ大陸に渡り、その土地の食品、美容品の貿易に携わってきた。彼らの店では、元祖マギーソースやvita maltoといった好奇心をそそる飲み物を発見することもできる。
グット・ドール通りに近いレオン広場Square Léonは、以前は麻薬の売買のメッカだったが、市の区画整備によって見違えるほど装いを新たにした。そこでは、民族衣装を着た、「ママ」と呼ばれる年配のアフリカ女性たちが、子供でも買える値段で、自家製の冷やしたビサップ(ハイビスカス)のジュースや、揚げパンなどを売っている。もちろん娼婦だっている。はたから見れば、ちょっと無法地帯に見えるかもしれない。「パリ」というイメージからはほど遠い。無論写真撮影も御法度だ。そうした彼女たちの姿からは、始原的な人間の営みが、フランスの植民地主義という歴史の影の部分が、見えてくる。西欧の奴隷狩りに、同じ肌の色をしたアフリカ人たちが一役買っていた、という苦い歴史は過去のこと、と口を揃えるカメルーン、コートジボワール、セネガル、トーゴ、ガーナ…の人々。母なる大地アフリカ、を合い言葉に、ブラザー、シスターと呼び合う。そんな連帯感に、少しながら胸を打たれる。
週末になれば、郊外から買い物に来る人々が、シャトー・ルージュ界隈を埋め尽くす。日も落ちるころには、食材をまるで今収穫したごとく手にして、皆ほくほく顔で家路へとむかう。そしてこの街に住むアフリカ人は、カメルーンギネス片手に、踊りだす。(麻)
魚屋には アフリカ直輸入の魚が並んでいる。キャピテンを選んでいる女性。夕食はチェブかな?
アフリカの食材を求めて、アフリカ人が集まる。週末のドジャン市場のにぎわいには圧倒される。
Noix de Kola
これで1€!
アフリカを旅していると、たまってたまって仕方ないモノって何でしょう? ストレス?!(笑)それは、コラの実なんです。バスに乗っていれば運転手から、市場に行けばママたちから、ただ道端に座っていればイスラムおじさんから…。とにかく「黙って食え」って感じで、突き出されるわけです。苦くて、特に味もなく…まずい! みんなに言わせると、覚醒作用があるらしい。それから滋養強壮まで! 嗜好品の少ない現地の人々にとっては、元気の源ということでしょうか。意を決してセッセと食してみましたが刺激の多い現代人の私には、あまり効果なしでショボリ。もちろん、シャトー・ルージュでも売っています。お試しアレー!(香)