フランスの10大都市の中で市民が市政に一番満足しているのは、ロワール・アトランティック県のナント市(人口約28万人)。1989年からこのナント市の市長の座についているのが社会党のジャン=マルク・エロー氏(58)。今回の地方選挙でも第1回投票で55.7%獲得し楽々3度目の再選を果たした。
父は繊維工場の工員で敬虔なカトリック教徒。家族揃って日曜のミサに通い、少年ジャン=マルクは教会のオルガンを弾くこともあったという。そして彼の最初の政治活動は、キリスト教系の青年運動だった。今でもキリスト教的な道徳観から抜けきれず、「同性愛者間の結婚に関しては、認めるか認めないかまだ迷っている」とは同僚の弁。温和で誠実、控えめな性格で、スターを演じなくてはいけないテレビのトークショーを避けたりするのも、こんな彼の青少年時代の反映に違いない。
大学卒業後、ドイツ語の教師に。27歳でナント市郊外サンエルブラン市の市長に当選。36歳で国民議会議員に。39歳で右派の前市長を破ってナント市の市長に選ばれる。「造船所閉鎖以来、無気力だったナントを目覚めさせてくれた」と右派の有力者も認めるくらいに、ナントの復興に力を尽くす。トラムウェイ網の拡張、郊外団地の改造、文化活動の充実…。「私の正当性は、私の町、私の選挙区の住民から与えられたものだ。誰かから譲られたものではない」。1997年以来、国民議会の社会党代表。ロワイヤル氏の熱心な支持者で、彼女が大統領になったら首相に就任するのでは、と期待されていた。(真)