メトロの広告ポスター貼り、サエドゥさん。

構成・文・写真:仲野麻紀

サエドゥさん 私はこの仕事を職業安定所で見つけ、義理の兄のすすめもあって始めました。RATPの下請けですが、その中には、私の会社のようにプラットホームの大きな広告ポスターを貼る会社や、通路にあるケースにポスターをはめ込む広告会社など、いくつかの会社が混在しています。私は11号線のシャトレ-ジュールダン間の管轄に配属されました。ですから常に私のボスと二人でこの二つの駅の間を行き来し、一日のノルマをこなすのです。この仕事、まず見習いの時期が3カ月から6カ月間あります。その間ポスターには触らせてもらえなく、ひたすらボスの仕事を見るだけ。要領をとにかく観察する、それが研修期間の仕事で、見ながら技術も覚えるわけです。しかし、研修生が途中でやめてしまう場合も多い。私はこの仕事を初めて7年になりますが、今まで私が受け持った研修生でやめてしまった人もいます。確かに肉体的に大変ハードな仕事ですから。
そういう私も覚えたてのころは、まだ自分の動きに対する感覚が身についていなくて、ひどい筋肉痛で困りました。痛みが治まらないのに次の日はまた同じ動作。大事なのは、ゆっくりゆっくりと、自分の体に問いかけながら貼ることです。大の男性でもさじを投げてしまうぐらいなのに、まれに女性が研修に来ますよ、しかしやはりやめてしまいますね。
原則的に7時には仕事を始められるように通勤します。ただ、慣れてくると、一日のノルマをこなせばよいので、自分のリズムに合わせて時間調整もできます。私の場合、午前中に仕事を済ませ、午後は身体を休ませるようにしています。ただ、線路脇の壁にポスターを貼る仕事は、メトロの運行時間外の仕事になります。そうでないと、私たちは電車にひかれてしまいますからね。週の初めは、常にプラットホームの壁に10~20カ所、広告ポスターを貼ります。その他に通路に貼る広告などもありますが、週末はその枚数が少なくなりますね。3カ所だけの場合もあります。
メトロの駅構内にあるノブのないドアを見たことがありますか?
それらは、一般の人には使えないけれど、トイレやシャワールーム、私たちのロッカールームです。また、ベッドやキッチンもあり、昼食をとったり休憩できるようになっています。掲示期間が切れたポスターを保管する部屋もあります。これらの施設は、レピュブリック駅のように、乗り継ぎの多い駅に多いですね。
それぞれの駅はRATPの所有になるのですが、11号線上のアールゼメチエ駅には広告は貼られません。あの場所はメトロの上にある工芸・技術博物館の持ち物だからです。
ポスターのスペースは、まれにいつも同じ広告主が独占していることもあります。よく見ると、あるスペースには常に同じデパートのポスター、という場合がありますよ。今の社会で広告がもたらす価値は底知れず、広告主にとっても受け入れ側にとっても大きな収益源になっています。仕事柄、私自身は、それぞれの広告の内容に対する意見は持たないようにしています。この職業に対して、職人という意識はあまりありません。与えられた仕事をしているだけです。「この仕事で大事なのは、ゆっくりゆっくりと、自分の体に問いかけながら貼っていくことです」

6h30

出勤。
メトロ構内にあるロッカールームで着替え、きょう貼るポスターのノルマを確認。

6h45

ロッカールムーム内できょうのノルマ分の糊を作ります。

6h50

すべての荷物を持って移動。

7h

駅構内の水道で水をくみ、仕事開始です。

7h15

はしごを組み立て、貼り仕事に取りかかります。

10h

ポスター貼りも一段落。大方の荷物を置いて駅構内にあるトイレへ。

12h

乗客がすべって転ばないように、落ちた糊や水を拭き取り、片付けます。

13h

メトロで移動。仕事終了。

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