ヴェリブで通勤したくて引っ越した! |
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エレーヌさんは、8月まで続いた1年間の研修期間を持ち前のガッツでこなし、先輩からのプレッシャーも笑顔でスルリとかわす術も覚えて、この9月に大手弁護士事務所に正式採用が決定したばかりの弁護士の卵だ。「9月でなきゃ駄目なのよ、とにかく9月には運があるの。だから新しいことを始めるのはこの月で、って小さいころからの決めごとなの」と真剣に語るエレーヌさん。実はヴェリブもスタート当初から挑戦したくてたまらなかったのだが、我慢していた。だから街でヴェリブに乗ってすいすい走っている人たちに出会うとわざと目をそらしていたのだとか。そのうえ、エレーヌさんは、ヴェリブで通勤したいがために、わざわざ引っ越ししたというのだから気合いが違う。もちろんのこと、アパートはヴェリブのパーキング近くを選んだ。どうしてそんなにこだわるの? 「まずアイディアが素晴らしいじゃない?それに色、灰色がかったベージュはパリの街に最高にマッチしてるわ」とベタ惚れのようだ。ヴェリブとともに始まる彼女の新しい生活は素敵な空気に溢れている。インタビューから1カ月が経った日曜日、人で溢れるサン・マルタン運河でエレーヌさんと待ち合わせ。約束してあったかのようにヴェリブで現れた彼女。体がなんだか引き締まったように感じたので、もしかして痩せた?と聞くと、「当たり!ヴェリブで通勤するようになったから!」と声を上げる。以前のラッシュ時のメトロ通勤は想像以上のストレスがあったし、メトロ・ブロ(仕事)・ドド(寝る)を繰り返す生活は健康的じゃなかった。今は、朝の空気を感じながら職場へ。ランチには安くておいしい食事ができるカフェまでちょっと遠出するし、友人宅でパーティがある夜もヴェリブだから終電の心配もなし、とヴェリブで彼女の世界は増々広がっているようだ。パーキングが目の前にある新しいアパートも大のお気に入り。晴れた日曜日なんてヴェリブの争奪戦をベランダから観察して、人が居なくなった頃合いにすかさず通りに出てタッチ&ゴーと得意げに発進するのだとか。「故障しているヴェリブだったら、サドルを逆にするというルールを守ろうね」というのが彼女から読者へのメッセージです。(ミ) | ヴェリブは最初から挑戦したかった。まずアイディアが素晴らしいじゃない。それに色、灰色っぽいベージュはパリの街に最高にマッチしてるわ。 |
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セーヌ川に浮かぶヴェリブの修理工場を見学に。 | 自転車専用レーンの現状 |
ヴェリブが開始されてから早3カ月が経つが、すでに壊れている自転車を見かける。パンクしている、ペダルがないなど故障の種類はさまざま。これらの自転車はどこで修理されているのかというと、なんとペニッシュ上に修理工場があるのだ。取材した当日はミラボー橋のたもとに停泊していたが、毎日シャラントンとミラボーの間を行き来している。この区間内の12カ所に自転車積載ポイントがある。例えばベルシー、オーステルリッツ、グルネルなどで、壊れている自転車と修理した自転車を交換している。 約150台収容可能な船には、自転車が所狭し並んでおり、常時4人の修理員が朝の9時から働いている。他に、船を管理している夫婦が住んでいる。修理工場をペニッシュに設けた理由は、エコロジーだし、移動が楽だからだそう。ヴェリブで使われている自転車は、JCDecaux社が開発している。重量は22キロで、特徴は、表にワイヤー、チェーンがでないようにカバーで覆われている、車輪が回ると自動的に電気がつく、ギアとブレーキが車輪の軸の中に組み込まれているなど、町中で乗りやすいようにデザインされている。自転車の99%が再利用可能な素材で作られているのも興味深い。 ペニッシュに運ばれてくる自転車は、車輪、かご、フレームなど修理に時間がかかる状態のもので、パンクやブレーキの故障など、修理が簡単なものはペニッシュには運ばれず、その場で修理されている。ペニッシュではフレームが折れた状態でも、溶接をして直すというからすごい。ほぼどんな状態でも直してしまうのだ。運ばれて来た自転車はすべて点検し直しているというのも安心する点だ。(ポ) |
ヴェリブの開発と並行して、数年前から自転車専用レーンが、ブールバールやアヴェニューなど、車の交通量が多い通りを主体に設けられている。自転車だけが走行できるレーン、バスやタクシーと一緒に走れるレーン、車が一方通行でも自転車は両方向に通れるレーンなど種類はさまざま。 自転車専用レーンは、歩道と一体となっているところが多いので、歩行者にぶつからないように注意すること、タクシーやバスは飛ばしてくるので、ひかれな いようになるべく隅の方を走ること、右折車(特にバイク)の巻き込み、自転車専用レーンでも進行方向(自転車のロゴが目印)は決まっているので、ちゃんと 守ることなどに、気をつけなければいけない。ロータリーや大きな交差点で曲がるときなど、手信号を出すことをお忘れなく。(ポ) |