友人の家に夕食に呼ばれた時に、今まで一度も味わったことのないチーズが出てきた。身はほとんどオレンジ色で、フルム・ダンベールのように灰色がかった
青カビがしっかり混じり込んでいる。当てずっぽうに「英国のチーズ?」といったら当たってしまった。「そう、シュロップシャーというんだ」
チーズ自慢のフランス人は、「えっ、英国のチーズ…」とバカにする人もいるが、英国人もチーズが大好きで、古くはローマ時代から作られてきている。各種
のチェダー、そして素晴らしい青カビチーズのスティルトン。ウェールズに近いシュロップシャーで作られているこの青カビチーズも、スティルトン同様に牛乳
が原料で、時間をかけて熟成される名品。固いけれど弾力のある身はオレンジ色をしているが、ミモレット同様にロクーと呼ばれる自然の着色剤を使っているか
らだ。薄く切ってゆっくり噛みしめると、こってりまろやかな風味の中から、少々刺すような青カビのうま味が広がっていく。それが、友人が出してくれたシェリー酒のかすかな甘味とひとつになって、うっとり気分。(真)