マグレブ系移民2世のラシダ・ダチ氏(41)が、今回の大統領選挙でニコラ・サルコジ候補のスポークスマンに抜擢された時、彼女は政界では無名に近かった。その彼女が法務大臣に就任するとは、誰も予想できなかったに違いない。「ニコラ・サルコジ氏は、誰の手助けもなく、すべてを力ずくで勝ち取ってきた。多分、宿命を拒否するという点で、彼と私にはどこか相響き合うところがある」とラディ氏は語った。 1965年11月、ソーヌ・エ・ロワール県で生まれる。父はモロッコ人の左官工で、母はアルジェリア人。高校卒業までシャロンヌ・シュル・ソーヌ市の、移民が多数住んでいる団地で過ごす。学業を続けながら、14歳から化粧品のセールスやスーパーのレジで働き始め、16歳の時には準看護士に。母の死後は、10人の弟や妹の面倒を見ながら、ディジョン大学で経済学を学ぶ。頭の良さに加えて、移民2世という宿命から脱皮したいという強い意志が彼女をつき動かし、21歳の時に、押しかけるように出かけたアルジェリア大使館でのレセプションで、当時の法務相、アラン・シャランドン氏に出会い、強い印象を与える。彼の推薦でエルフ社に入社。続いてマトラ社、リヨネーズ・デ・ゾー社などで経験を重ね、1995年には教育省内のコンサルタントに。1997年に国立司法学院に入学し、2年後には司法官。2002年に当時内務相だったサルコジ氏に、内務省内で仕事をしたい旨の手紙を書いて即座に採用される…と夢のような出世ぶりだ。しかし、2005年末、各地の都市郊外団地で若者たちが騒いだ時、同じような郊外団地出身でありながら、ダチ氏は、なんら根本的な対策をプロポーズできなかったようだ。 新法務相は就任演説で「司法官に深い敬意を抱いている。彼らと協力しあいながら、公平な司法を目指したい」と語ったが、近々国民議会に提出される、未成年再犯者に対する厳罰主義などを含む法案に対し、司法官たちからの批判の声がすでに高まっている。(真) |