すべてはひとつの骨壺から始まった。祖母の葬儀のため久しぶりに里帰りし、母親と再会する息子。長い看病の末、年老いた実母を弔ったばかりの母親の心は疲れと安堵に占領され、息子にはなかなか注意が向けられない。ぎくしゃくした母子関係。そこへ息子の幼なじみで初恋の相手だった女が登場。再会を喜ぶあまり若い男女は骨壺をうっかり落とし、灰はサロンの床の塵の中に消えてしまう。昼寝から目覚め「骨壺は?」と尋ねる母のために二人が苦し紛れに考えだした答えとは…。 『死が我らを分かつまで』というタイトルの皮肉さ。この表現は通常自らのまたは相手の死での別離を意味し、婚礼など愛溢れる場で使うけれど、この母と息子はすでにかなり前から「別れた」状態にあったので、この度の祖母の死が決定的に母子を「分かつ」ことになった。さらに奇妙で皮肉なのは、若い二人がとっさについた嘘が「わたしたち結婚します!」という葬式の日にはとても発表できないような「めでたい」出来事だった、ということだ。嘘が嘘をよび、若い二人がどんどん深みにはまっていく様子が我々を爆笑&苦笑させる。そしてラストシーンでまた光る皮肉さ。嘘をついても憎み合っても言い争いをしても、 これは結局「家族だから」ってこと? 家族団欒とか家庭円満などという言葉がしらじらしく感じられるような「偽善的」な部分がきっとどの家庭にも存在するのだろう。このブラックユーモアに満ちた戯曲の作者はレミ・ド・ヴォス、かなりエキセントリックな演出を担当したのはエリック・ヴィニエ、貫禄と存在感たっぷりの母親役にはカトリーヌ・ジャコブ、幼なじみ役にはクロード・ペロン、マザコン&ナルシスト息子にはミシャ・レスコ。(海) |
2/18迄。火-土21h、日マチネ15h。 |
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