最初から最後までどこか山師的な人である。 “Yves Klein, corps, couleur, immateriel”

 イヴ・クラインというと、あの、「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」を一面に塗った作品が有名だ。なぜ青一色? この色にどんな意味が? と思っていた人は、ポンピドゥ・センターのイヴ・クライン展に来れば、疑問が解ける。1962年に34歳で急逝した芸術家の全貌を約160点の絵画や写真で見せる、一大回顧展だ。
 会場入り口左に、クラインの言葉がある。「僕が到達したいのは、まったく何もしないことだ。単に〈いる〉だけでいたい。(…)画家として〈僕が存在する〉ことは、最も〈素晴らしい〉絵画作品となるだろう」
 この言葉から強烈に発散される自我が、なんともうさん臭い。つい、これから見ようとする作品群に警戒心を抱いてしまう。果たして、この勘は当たっていた。クラインの芸術家としての器の大きさと比類ない独創性は否定しようがないが、最初から最後までどこか山師的な人である。
 ニースで柔道を習い始め、1年の日本滞在で、当時の外国人としては破格の四段を取得した。日本の精神文化に大きく影響されたかに見えるが、むしろ、クラインの自己形成のなかに、ちらっと日本文化が加わった、といったほうが適切だ。彼の考え方はまったく西洋のものである。
 1957年から、クラインは芸術の「見えない部分」を表現しようとする。ここでも、彼の饒舌な言葉が、作品のシンプルな美しさを台無しにしている。「理」と「感」のギャップが大きいのだ。
 このように書くと、クラインをけなしているようにみえるかもしれないが、なんとも魅力的な展覧会である。特に、後半になるほど面白い。ガスバーナーで紙の表面を焼いた作品は、夢幻的で美しい。空気や水、火を用いた建築の構想は、環境資源の無駄遣いという点を別にすれば、40年後の今も新鮮だ。想像力も構想も、壮大な人だった。芸術家になっていなくても、他の分野で独創的な仕事をしたに違いないと思わせる、稀代の才人だ。
 「今、僕は芸術を越えたい?感覚を、生を越えたい。空(くう)と一体になりたい」。そう言いながらも、自らの結婚式をパフォーマンスに仕立て上げ、あっけなく亡くなってしまった。やはり、山師的な面白さのある人である。(羽)

Peinture de feu sans titre, 1961
Carton brule sur panneau –
175 x 90 cm
Collection particuliere
CP: Adagp, Paris 2006

ポンピドゥ・センター。2月5日迄(火休)。 

Espace Cargo 21
 地下鉄Barbes-Rochouchouartの北側にあって、東西が北駅から走る線路とバルベス大通りで囲まれ、北は地下鉄Marcadet Poissonieresまでの地域をGoutte d’Or(金の滴)という。昔から、パリの建設現場で働く労働者たちの住居区域とされたところだ。50年代からマグレブ、80年代からはアフリカ系の住民が増えた。
 この地区唯一の画廊、Cargo 21は、地元のアーティストたちと共に設立したアソシエーションだ。プロ、アマ含め、300人から400人のアーティストがこの地域に住んでいるという。
 「この地域の子どもたちは、親の出身国がどこにあるかも知らない。展覧会を通して、住民に出身国の芸術や文化を知って欲しいと思ったんです」と、責任者のジャン=マルク・ボンボーさんは話す。コンサートや、子どもの創作意欲を刺激するワークショップもある。「実験的な、開かれた文化交流の場と考えているから、他の地域の人も大歓迎です」
 11月3日から25日まで、「写真月間off」として、世界を旅した7人の写真家の合同展を開催。ヴェルニサージュは3日18h30から。(羽)

Espace Cargo 21 : 21 rue Cave 18e
M。Chateau Rouge www.cargo21.org

●Rembrandt dessinateur
 レンブラント生誕400年を記念する展覧会。聖書を主題にしたもの、風景画、風俗画など64点のデッサンを展示。レンブラント(1606-1669)の希有な観察力と想像力を再発見。1/8迄(火休)。
ルーヴル美術館 Hall Napoleon

●Rembrandt, Eaux-fortes

 レンブラントの銅版画180点を展示。同展覧会の一環としてオーディオルームでは、現代銅版画家エリック・デマジエールをテーマとするドキュメンタリー “Le Paris d’Erik”(監督Bertrand Renaudineau 2006)を上映。1/7迄(月休)。
プチパレ

●Paris a grands traits
 モンマルトル、モンテベロ河岸、パッサージュ。パリを愛する銅版画家エリック・デマジエール(1948-)の描く緻密で詩的なパリ。2/25迄(月休)。
Musee Carnavalet : 23 rue de Sevigne 3e

●Bruce CLARKE (1959-)
 アパルトヘイト、ルワンダ大虐殺など、少数権力者による多数の人々への暴力を告発してきたアーティストの近作。今もなお世界で起こり続ける問題を喚起。11/10迄。
Musee des Arts Derniers:
105 rue Mademoiselle 15e

●Eugene Atget (1857-1927)

 パリと近郊の風景、建造物、街路など、1万点の写真を残したアッジェ。ニューヨーク現代美術館所蔵の49点を展示。1/13迄。 
Galerie Karsten Greve: 5 rue Debelleyme 3e