つばの広い帽子の下からぎょろりと覗く鋭い目、低くて太い声の巨大な男…。オーソン・ウェルズは1915年に米国ウィスコンシン州で生まれた。本名はジョージ・オーソン・ウェルズ。学生時代から演劇に魅せられ、初めは役者、演出家として舞台で活躍。映画監督として『市民ケーン』(1941)、『黒い罠』(1959)、『審判』(1963)などの名作を残すほか、役者としては『第三の男』(1949)、『ロゴパグ』(1963)などでの名優ぶりが印象に残る。 そのウェルズの最後の誕生日(70歳)の翌日を描くのがこの戯曲。長い間暖めてきた新作『ドン・キホーテ』の資金繰りに四苦八苦するあまり、ウェルズは一度縁を切ったハリウッドで活躍するスピルバーグから何としても援助を得ようと、自分の助手を送り込む。一方ウェルズ自身は、借金返済のため「短時間で稼げる」ラジオCM の録音スタジオに缶詰状態。気の知れた技術者との口論とくだらない宣伝文朗読録音の合間に、ウェルズは昔を振り返る。リタ・ヘイワースとの恋、ヘイワースのために撮った『上海から来た女』(1947)の思い出、『オーソン・ウェルズのオセロ』(1952)を携えて参加したカンヌ映画祭での体験…と、ウェルズは記憶をたどっていく。 原作はウェルズ研究の第一人者、アメリカ人リチャード・フランスの手によるというだけあって、ウェルズの心情が細やかに描かれ、「巨人」「怪物」という一般的なイメージとはちょっと違った、人間味溢れるウェルズの横顔が見え隠れする。ウェルズ役を演ずるジャン=クロード・ドルーオ(演出も担当)は、ウェルズの晩年によく似た風貌、そして声色と仕草で舞台を独占、観客を圧倒する。(海) |
火-土21h、土マチネ16h、 Carre Marigny 8e 01.5396.7020 |
|