白黒の美しさは完璧だが、人間臭さがない。 “Lee Friedlander”

 写真界の巨人、リー・フリードランダーの50年の活動を総括した展覧会である。2005年夏に回顧展を開催した、ニューヨークの近代美術館(MoMA)が企画した。展示作品は約500点。
 フリードランダーは1934年にワシントン州で生まれ、50年代に写真家としてデビューした。
 60年代の写真では、アメリカ合衆国のどこにでもありそうな、なんの変哲もない街や田舎の一角が、切り取り方の妙で不思議な風景に変貌している。たとえば、夜のショーウィンドーに建物が写り、都会の道路の真ん中にベッドがあるかのように見える。あるいは、車のミラーに写った平凡な風景が、その場の風景の真ん中に異次元的なものとして挿入されている。
 76年に出版された “The American Monument” は、国内各地に建立されている彫像を、生きているかのように人間臭く撮ったものだ。サボテンの荒地を果敢に歩いて行こうとする人、ビルの間を行軍しているように見える一群、歩行中の人を狙い撃ちしているような歩兵など。
 もっと後の年代になると、工場や事務所で働く人々を撮った写真が出てくるが、フリードランダーの場合、彫像のほうが生身の人間よりもずっと感情豊かに撮られている。
 人間だけでなく植物にも、ただ撮られているだけの美しさがある。フリードランダーにあっては、石の彫刻のほうが動的であり、人間を含めた生き物のほうが静的だ。荒地の植物は水の結晶のようで、生い茂っていても、生命力に霜がかかっているかに見える。
 風景写真の傑作 “Lake Louise” の水は、鉱物的で動いていない。山も岩も水も、時のなかで止まっており、異様な静けさが感じられる。
 白黒の美しさは完璧だ。しかし、完璧すぎて、フリードランダーの写真は、飾り気がなくすっきりと美しい非の打ちどころのない人、しかし、人間臭さがなく、頭の中に何があるのかわからない人を思わせる。素晴らしい展覧会なのに、写真とそれを見る自分が、何枚もの透明なガラスで隔てられている、そんな感じがした 。(羽)

Lee Friedlander
Lake Louise, Canada, 2000
Collection of the photographer
c: 2006 Lee Friedlander

ジュ・ド・ポーム:コンコルド広場、
チュイルリー公園内。12月31日迄(月休)。

Atelier Tampon-Ramier
 OVNI590号で紹介した、木工家具のニス塗り職人マルクさんのギャラリー。
 古くから職人街だったフォブール・サンタントワーヌにアトリエを構えていたころから、芸術を愛するマルクさんはミュージシャンやダンサーたちを招いてコンサートやパフォーマンスを催していた。地区整備でアトリエを退去して今の場所に移ってからもその活動は続け、画家でダンサーのベネディクトさんと意気投合してからは、共同でアソシエーションを立ち上げた。2年前から隣のアトリエをギャラリースペースとして借り切り、ますます活動の幅を広げている。
 地上階では年に4回エキスポジションを開催。夜は地下のステージで、アーティストと美術評論家の対談や、即興ジャズのコンサート、ダンス、朗読会、映像作品の上映、自然ワインの試飲会などが行われている。昨年は130回も地下の客席が埋まったそうだ。
 既成の画廊などが作り上げるアートトレンドとは全く独立した、自由な精神の創造作品を独自の立場で紹介していこうというマルクさん。彼の組むプラグラムに好奇心を掻き立てられずにはいられない。(仙)

左ベネディクトさん、右マルクさん。

14 rue Jules Valles 11e 月休
問い合わせ:01.4373.5346 /
06.6073.5346

●装飾美術館が10年ぶりにオープン
 所蔵15万点(6000点展示)、展示スペース9000m2。展示方法を一新、コレクションも充実させてオープン。祭壇画、装身具、壁紙、家具、ステンドグラス、プラスチック製品など、中世から現在まで人々がより心地よく生活するために創作してきた数々の作品。各時代のインテリアを再現した「ピリオドルーム」は見どころ。月休。
Musee des Arts decoratifs
107 rue de Rivoli 1er

●Norbert PRANGENBERG (1949-)

 巨大なセラミック作品。古代の壺のようなフォルムからささやかれるポエジー。そしてそよ風のようなデッサン、タブローとのシンフォニー。10/14迄。
Galerie Karsten Greve : 5 rue Debelleyme 3e

●Bruno MATHSSON (1907-1988)
 機能性に富み、優れた技術で仕上げられた家具で今でも人気のあるスウェーデン人デザイナー・建築家、ブルーノ・マットソン回顧展。10/28迄(月休)。
Centre culturel suedois : 11 rue Payenne 3e

●Annees 50a Sevres-L’effet ceramique
 ヴァンセンヌからセーブルに陶磁器工房が移転して250周年。1950年代のセーブル磁器の展覧会。陶磁器はもちろん、当時の家具なども含め200点を展示。工房内デザイナーと外部デザイナーが刺激し合い、創造性豊かな作品が生まれた時代。11/30迄(火休)。
Manufacture nationale de Sevres :
Place de la Manufacture 92310 Sevres

●Ernesto NETO (1964-)
 重力に逆らって肉体を引きずり、過去の文明につながれ、ぎりぎりのバランスを取ろうとする人間。パンテオンの丸天井の下に繰り広げられる、ブラジル人作家エルネスト・ネトのインスタレーション。12/31迄。
Pantheon: Place du Pantheon 5e


 

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