Jean Raimondo アイスクリーム職人 12区も今は普通のパリ。

 「昔この辺りは本当の田舎で、農場があって、牛や馬が歩いていたんだ」。だが「今は普通のパリになってしまった。しかもパリよりもずっとひどい状態にね」と嘆くのは、12区はドメニル界隈に住むジャン・レイモンドさん。1947年の創業以来、自家製のアイスクリームが自慢の〈RAIMO〉を守ってきたご主人だ。

ヴァンセンヌの森に隣接し、超モダンなベルシー地区や、古きよきパリの香り漂うバスチーユの路地裏など、ひとくちに12区といっても新旧様々な顔をもつ。広々とした歩道にベビーカーを押す親子連れやお年寄りの姿が行き交い、ゆったりした家族的な光景が見られるドメニル街。数分歩けば、緑の散歩道〈Promenade plantee〉や、パリの秋葉原、モンガレ街があったり、敷地内に学校からスーパー、病院が凝縮した集合住宅地があったり、観光地からはほど遠い界隈でもある。
74歳になった今も、毎朝、ランジスの中央市場に出かけて、アイスやソルベの素材を丹念に選ぶ。「僕はランジスでは有名だけど、スターじゃないんだ。大量購入する上客ではないからね」。アイスクリーム作りはもちろんのこと、夜遅くまで、カフェの切り盛りにも忙しい。「今やこの業界で、僕の真似をしたい若者は一人もいないよ」。コストや時間のわりに収益が少ない職人の世界で、ハードな仕事をこなし続けるのは至難の業だ。そろそろ疲れがたまってきたのでは?「疲れるのは心配事がある人間だけ。物事が万事快調だったら疲れないし、休む必要もないんだ」。週一回の休日はボヘミアン的に何もしない主義。「億万長者じゃないけど、家族と一緒においしいものを食べ、楽しい時間を過ごす。そんな優しい日常があるだけで幸せだ」
何度も繁華街への出店の誘いを断り続けたレイモンドさん。「このまま小さくいるのがいい。ハーゲンダッツのように大量生産をすると、味も香りも、そしてパーソナリティも失ってしまうよ」。この界隈に店を構えて半世紀以上、12区の変貌を目の当たりにした。近代化が進み、街は移り変わるけど、昔ながらの人情は、ちゃんと残っている。数十年前、親の手に引かれてやってきた子供たちが、自分の子を連れてくる。中には30年、40年来の常連客も、たくさんいる。「僕の仕事は夢を売ること、そして僕はまだまだその夢に生き続けたいんだよ」(咲)
RAIMO GLACIER : 59-61 bd de Reuilly 12e
01.4343.7017

●ディズニーランド・パリ
自他共に認める「子供がそのまま大人になった」レイモンドさん。パリ東郊外、欧州で唯一のディズニーランドは大のお気に入り場所だ。といっても目的はアトラクションではなく、大きな敷地内にあるホテルでの滞在や、ディズニー・ヴィラージュにあるレストランでのひと時。家族とともに、「まるでアメリカにいる」ような気分を味わう。これが案外楽しいもので、それこそ時が経つのを忘れてしまう。
*TGVかRER A線のChessy-Marne La valleeから徒歩かシャトルバスで。



 

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