欧州航空防衛宇宙社(EADS)危機を脱出?

 クリアストリーム疑惑(No.589)で怪文書の匿名差出人、ジェルゴラン容疑者がEADSの戦略部長だったことから、EADSの社名に傷がついたのは否めない。
 そして6月14日、EADS(仏国有株15%、ラガルデール7.5%、ダイムラー・クライスラー社22.5%)の株価が一挙に26.3%暴落(21euros →16.75euros)、数時間で60億ユーロの損失を記録した。株暴落は、13日、EADSの総生産高の80%を扱う子会社エアバス社が製造する超大型旅客機A380の発注航空会社への納期が、さらに6、7カ月遅れると発表されたためなのか。
 昨年5月、A380は550~840人収容できる超大型旅客機として、華々しくトゥールーズで公開された。米ボーイング社製旅客機を抜く21世紀の旅客機として航空会社十数社から注文が殺到、2010年まで159機を受注済み。生産の遅れは昨年6月にも発表され、07年度は生産予定数20~25機を9機に減産。シンガポール航空などはA380の注文を取り消しボーイング787型に切り替えるという。納期を待つ航空会社への遅滞弁償料も含め年間5億、4年間で20億ユーロ減益の見通し。
 株の暴落で不審をもたれているのは、3月15日にフォルジャール仏社長他5人の取締役がストックオプションを大量に売却、同社長は250万ユーロの譲渡益を取得した。そして4月初めに2大株主、アルノ・ラガルデール取締役会仏会長とダイムラー・クライスラー社がそれぞれ7%売却したこと。彼らはA380の納期遅滞による株価暴落を見通していたのか、インサイダー取引があったのか、金融市場仏監視局AMFが調査中。
 EADSは、2000年末に仏・独・英・スペインが共同で設立させた欧州コンソーシアムで、4カ国16都市に工場をもつ。特に仏独共同事業として、取締役会会長に仏側ラガルデール氏と独側ビショッフ氏、社長に仏フォルジャール氏と独エンデール氏と、取締役から社長、専務まで仏独共同2人制。昨年、仏政府にEADS共同社長に推されたのが前エアバス社長フォルジャール氏。彼は仏独2人制を1人制にすべきと提案し、独側から警戒視されていた。仏独幹部が個人利益・国益のために牽制しあうなかで共同体制の均衡が揺るぎ始め、創立以来初の危機に直面している。
 ブルトン経済相は7月2日、首の応急据え替えを決行。フォルジャール氏の座にガロワ国鉄総裁を、同総裁の座にイドラックRATP総裁を順に繰り上げる。エアバス社長ユンベール氏をA380の納期遅滞を理由に引責辞任させ、後釜にサンゴバン元社長ストレフ氏をと、駒の配置換えで危機を脱出?(君)