ベルギー風トリのクリーム煮は柔らかな味。 Waterzoi de poulet

 ベルギー北部フランドル地方の名物料理がヴァテールゾイ。フランドル語で「沸騰する水」という意味らしいが、北海の魚やトリ肉をじっくり煮込んでからクリーム風味をつけた、ブランケットに近い料理だ。今回は、ブリュッセルから50kmのところにある運河町ゲントの名物というトリ肉のヴァテールゾイを作ってみよう。
 トリ1羽は8つに(上もも2、下もも2、手羽2、胸肉2)切り分ける。長ネギとニンジンは5センチの長さに切り分けてからせん切りする。セロリも筋をとってから同様にせん切り。
 ココット鍋を弱火にかける。バターを大さじ2杯加え、まず野菜をしんなりするまで炒める。ここでトリ肉を加えて混ぜ合わせ、火をやや強くする。塩、コショウをししばらく炒めていくが、白く美しく仕上げたいので、焼き色がつかないように注意。トリガラのスープをひたひたになるまで注ぐ。沸騰してきたらアクをとり、丁字を2本刺したタマネギとブーケ・ガルニを入れる。沸騰してきたら弱火に落とし、フタをして50分ほど煮込んでいく。
 網杓子を使って、トリをこわさないように取り出し、皮をとってから、なるべく冷めないようにしておく。タマネギとブーケ・ガルニも取り出す。
 残った煮汁を中火で少々煮詰める。ボールに卵の黄身を2個分とって割りほぐし、液状の生クリームと混ぜ合わせ、さらに煮汁をお玉で半分ほど加えて混ぜ合わせ、これを一気に沸騰している煮汁全体に混ぜ入れる。塩、コショウで味を調え、泡立て器で絶えずかき混ぜていき、ぐつぐついいそうになったらトリをもどす。もう一度ぐつぐついいそうになったら火から下ろす。各人の皿にトリを盛り付け、その上から野菜とクリームソースをかけまわす。
 輪切りにしてから軽くトーストしたバゲットパンを添える。フランドル地方の人ならビールを飲むけれど、ワインならアルザスの白、あるいはマコンのような軽くて上品な赤がいいだろう。(真)

●オステンドの北海小エビ
今回紹介したゲント風ヴァテールゾイを味わったのは、北海に面した港町オステンド。ユーロトンネルができて以来、フェリーで英国に渡る人も大幅に減ってちょっとさびれた匂いを漂わせているが、それも悪くない。
ここで獲れる舌ビラメのムニエルのおいしさは名高いが、忘れてならないのが小エビ。パリで〈crevettes grises〉と呼ばれているものだ。これが波止場にある小さな魚市で山積みされて、1キロ8ユーロ前後で売られている。この市場の裏がちょうど船着き場になっていて、捕獲後すぐに船上の大釜でぐつぐついっている海水でゆで上げられ、さっと冷まされ、箱にあけられ、そのまま市場に並ぶのだから、うまくないのがおかしいくらいだ。ボクらは250グラム買ってビニール袋に入れてもらい、突堤の先にあるブラッスリーを目指して歩きながらつまみ食い。柔らかめの塩加減、むっちりしこしことした歯ごたえ…。いくらでも食べられそうだ。ボクらの周りに殻や頭が散らかってしまったが、カモメや小鳥たちがきれいに掃除してくれた。
オステンドのほとんどのレストランで前菜として出てくるのが小エビのコロッケcroquettes de crevettes。むき身の小エビが入ったクリーコロッケで、一人前10ユーロ前後と安くない。
そして小エビ入りサラダ。メグレ警視シリーズの著者ジョルジュ・シムノンは、長男の誕生を待ちながら、ビールを飲みつつ朝ごはんがわりに、大好物のこのサラダを食べたという。

●faire suer
時々フランス語のレシピに「faire suer les légumes pendant 10 minutes(10分間野菜に汗をかかせる)」と出てくる。今回のレシピのように、細かく切った野菜を油やバターでゆっくりと炒めて、その水分の一部を出させて、汗をかいたような状態にすることだ。