〈廃棄パソコン問題〉
環境・エネルギー制御局ADEMEによると、フランス人は1年に170万トン、イル・ド・フランスだけで40万トンの電化・パソコン廃棄物(1人当たり13キロ)を排出しており、毎年3~5%ずつ増加。
EUの指導要綱03年法〈UN POUR UN 1台に対し1台〉は、商店は1台販売したら客の廃棄パソコンを1台回収すべしということ。さらに生産・流通業者には廃棄パソコンの再利用部門の設立を義務付けている。
しかし、2005年6月8日付リベラシオン紙の取材記事によれば、中国は広東省のコイユ市に大規模な廃棄パソコンの集積所があり、常時約10万人の出稼ぎ労働者が働いている。彼らは欧米や日本、台湾などからコンテナーで運ばれてくる廃棄パソコンの分別から解体、焼却までを行っている。ちなみに欧米全体で毎年排出される廃棄パソコン量は年間600万トン。それらを焼却すると、水銀だけでも36トン、そして16トンのカドミウムが排出されるという。劣悪な労働環境のもとで、先進諸国から送られてくる廃棄パソコンのリサイクル産業のために農村から働きにくる労働者たち。コイユ市が労働者、そしてパソコンの墓場になることに抗議する環境保護団体グリーンピースは、産業優先のため有害な廃棄物の不法輸入にも目をつぶる中国政府の姿勢に厳しい監視の目を向
けている。
〈焼却〉
パリ南郊外イヴリー・シュル・セーヌにある焼却炉(1960年)はイル・ド・フランスで一番古く、2本の煙突は10キロ離れた所からも見える。ここではパリの9つの区と周辺の14自治体から集められた生ゴミと分別不可能なゴミが年間72万トン焼却されている。その焼却熱はパリの8000戸の暖房に役立っているという。
しかしながら焼却炉からは、年2350トンの炭化水素酸が水中に、1トンの鉛が大気中に排出されている。同施設を管理している家庭ゴミ処理自治体組合Syctomは、2005年12月28日より施行のEU規格(0.1ng/m3)に合わせるため改造工事に取り組んでいるようだが…。EU規格に準じれば、ダイオキシンの排出量が一挙に10分の1に減るといわれているが、いまのところ全国の129施設のうち規格に準じた焼却炉をもつのはたったの6施設にすぎない。
ナンテールのゴミ分別所
C: SYCTOM/Patrick Tselli
イヴリーの焼却所
C: SYCTOM/Didier Raux
〈埋め立て〉
〈新時代の無害のゴミ捨て場〉といわれる埋め立て地として、イル・ド・フランス東部モー市近くのクレイ・スイイ村に最近できた埋め立て地がある。森と緑地に囲まれた敷地218ヘクタールのうち160ヘクタールがゴミの埋め立てにあてられている。毎日1200トン、年間100万トンのリサイクルできないゴミが大型トラックで運ばれてくる。放射性探知器を通過した粗大ゴミは小型クレーンがつかみ出し、最後は深さ13メートル、1万平米の埋め立て溝(180万トン収容可能)に埋め込まれる。7つの埋め立て溝のうち5つはすでに満杯。底と中間層、上層にビニールシートが敷きつめられ液体流出を防止している。腐敗から発生するメタンガスはエネルギー源としてリサイクルされるという。
この種の埋め立て地は環境を害することはないそうだが、永遠に農地にも建設地にも適しない「ゴミの墓場」となるわけだ。
焼却後の残留物は道路などの補修材に。
C: SYCTOM
ペニッシュで運ばれる圧縮した紙類
C: SYCTOM/Didier Raux
摂取しきれない薬や開封もしてない薬がたまるいっぽう。薬の年間生産量は7万トン(90%は容器包装)。1992年の法律で、製薬会社は期限切れの薬や再利用できる薬の回収を義務付けられており、市民は薬局に箱ごと未使用の薬をもどせるようになっている。
薬のリサイクル組織Cyclamedは、再利用可能な薬を回収し発展途上国に送っている(2003年:2000万箱)。だが余った薬をこまめに薬局にもどす市民も少ないうえ、薬局もあまりいい顔をしない。なかには回収された未開封の薬をそのまま商品棚に並べている薬局もあるとかで、2年ほど前にマスコミ
で話題になったものだ。
フランスの年間廃棄物(2002)
全国総量 6億3000万トン
農業関係 3億7500万トン
産業廃棄物 1億600万トン
家庭ゴミ 3140万トン
自治体 5000万トン
パリ:年間300万トン
(1人平均 534kg / 全国平均 440kg)
レジ袋
2003年 : 150億枚
(プラスチック材 8万5000トン相当)
2004年 : 120億枚
(プラスチック材 6万6000トン相当)